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引き続き拡大が予想されるフィリピン畜産業
【シンガポール駐在員 外山 高士 7月13日発】フィリピンの経済学者によっ て試算された今年の農業生産額は、前年比2.5〜3%の伸びとなっており、畜産 業についても2.7%の伸びが見られるものとされている。 この数値は、今年初旬に農業省の公表した3〜3.5%より低くなっているが、 これは最近激化しているミンダナオ島における内紛が、最も大きな原因であるとさ れている。この試算の前提では、ミンダナオ島の中央部にある5つの州で、内紛に よる作付けができない状況となっており、コメで5,400ヘクタール、トウモロコシ で1万4,700ヘクタールが被害に遭っているとして、それぞれ2,600万ペソ(約6,760 万円:1ペソ=約2.6円)と1,200万ペソ(約3,120万円)の損失となるものとさ れている。このため、生産量ではコメが前年比6%増の1,250万トンとなるものの、 トウモロコシは、6.8%減の430万トンにとどまるものと予想されている。しかし、 ヤシで25%増、サトウキビで5.3%増、水産業で80%増が期待できることから、 全体では前年よりも増加するという今回の試算結果となったとしている。 畜産業は、養豚業の伸びが4〜5%と試算されていることから、全体でも2.7 %の伸びが試算されている。しかし、一方では、今後の課題として、豪州との生体 牛輸入問題を挙げている。 豪州との生体牛輸入問題は先般、豪州側がフィリピン産果物の輸入検疫に係る調 査の期間を早めることで、一応の決着を見たものの、これまで生体牛輸入の90%以 上を豪州に頼っていた影響は大きく、その規模は不明であるが、牛肉生産は減少す るものとしている。また、99年には15%だった牛肉に係る関税率が、今年は10%に 引き下げられたことも、牛肉生産の減少につながる要因として挙げられている。 鶏肉部門については、3.8%増と試算されている。これは、現在、鶏肉の部分 肉について、輸入検疫許可証の発行を中止していることが主な要因であるとしてい る。 同国では、98年の鶏肉輸入量が前年比で約2倍に増加し、99年には200倍以上にも 急増していた。また2000年の第1四半期でも約5倍となっており、養鶏業者から、 輸入鶏肉のうち、特に米国から輸入される、価格が安くフィリピン人に好まれるも も肉の輸入を規制する要望が出されていた。これを受けてフィリピン政府は、現在、 輸送中の温度管理の問題を挙げ、鶏肉部分肉に係る輸入検疫許可証の発行を中止し ている。 農業、特に畜産業は、通貨危機により停滞していたフィリピン経済を回復させる 大きな原動力となってきた。しかし、その一方で、これまでとられてきた農業保護 政策について、多くの問題が表面化し始めており、今後の政府の動向が注目されて いる。
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