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タイ政府のと畜場、再び操業開始が延期
【シンガポール駐在員 外山 高士 6月1日発】タイ畜産振興局は、衛生水準の高い 施設で処理された豚肉の国内供給を増加させるとともに、東南アジアや日本をはじめと する地域に輸出市場を開拓するため、3億バーツ(約8億7千万円:1バーツ=約2.9 円)を費やし、98年12月、国有地に近代的な豚のと畜場を完成させた。このと畜場につ いては、効率的な運営を図る目的から、民間業者に委ねることとし、一般からの希望者 を募る形を取っていた。 しかし、このと畜場の建設には多額の費用を要したことから、1ヵ月当たりの賃貸料 が62万バーツ(約2百万円)とかなりの高額となっていた。このため、民間業者たちは 採算の合う経営は困難であると判断し、応募が全くない状況となっていた。 この状況を打開するため、畜産振興局では、財務当局との協議を行い、3年間の使用 期間における土地と機械の賃貸料の2千万バーツ(約5千8百万円)を免除することと した。そして賃貸料を引き下げた上で、再度の募集を実施したところ、東部畜産協同組 合とポンナムロン農産物組合の2業者が運営に名乗りを上げた。その後、2ヵ月間にわ たる話し合いの末、東部畜産協同組合が、全国養豚組合、豚肉生産加工業者協会と共同 運営することで、このと畜場の運営を任されることとなった。しかし、賃貸料は依然と して高額であるとし、共同運営体では、1千5百万バーツ(約4千4百万円)の引き下 げを契約の条件としていた。この金額について、財務当局では、畜産振興局からの申し 入れもあったことから、引き下げに応じる方向で対応する予定としていた。 ところが、最近になって、この共同経営体が畜産振興局に対し、賃貸料をさらに4百 万バーツ(約1千2百万円)引き下げる要望を提出したことから、この提案が受け入れ られるかどうかをめぐって微妙な情勢となり、5月に本契約が締結される予定であった このと畜場は、現在も稼働できず、再び操業開始が延期されることとなっている。また、 この共同経営体には、と畜場の運営に必要な専門の技術者がそろっておらず、運営能力 についても疑問視する声がある。 一方、畜産振興局では、なるべく早く操業を開始させたいことから、このと畜場の運 営に応募してきたもう1つの民間業者であるポンナムロン農産物組合に対して、この共 同経営体と合弁を組むあっせんを行うなどの対応に迫られている。 タイ政府には、完成後1年以上も操業されずに休眠状態の続いていると畜場の早期操 業開始と、近代的なと畜場の運営により、豚肉の衛生水準の向上を図りたいとの思惑が ある。しかし一方では、現在、豚肉は供給過剰により価格が低迷している状況となって おり、政府の今後の対応が注目されている。
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