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アルゼンチン、念願の口蹄疫清浄国へ
【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 6月7日発】5月22日から26日までパリ のOIE(国際獣疫事務局)本部で第68回年次総会が開催され、24日の国際委員会 の一般会合で、アルゼンチンを口蹄疫ワクチン不接種清浄国に認定した。 南米主要国の口蹄疫の状況に関する認定については、以下のように採択された。 @アルゼンチンがワクチン不接種清浄国に認定、Aブラジルの1連邦地区と南部お よび中西部の5州がワクチン接種清浄地域に認定(既にワクチン接種清浄地域であ るリオグランデドスル州とサンタカタリナ州はワクチン接種を中止しワクチン不接 種清浄地域の認定に向け取り組んでいる)。 今回の決定でアルゼンチンは国際的に口蹄疫非汚染国と認められたが、この道程 は決平坦ではなかった。1870年に最初の口蹄疫の確認に始まり、1910年の同国政府 による汚染国宣言、続いて1929年には米国の輸入禁止で大きな痛手を受ける。その 後、生産者も参加し口蹄疫対策が講じられるが、決定打は89年に開始された撲滅対 策で今回の決定に直接かかわるとされる。 この決定を受けて、今後、各国との2国間協議を経て、以下のような具体的な変 更が予想される。@病気の感染予防から従来EU向け牛肉は生産者から直接購入し た牛由来のものに限られていたが、今後はリニエルスなど市場を通した牛の肉も輸 出できる、A骨付き肉の輸出ができる、B神経やリンパ節などの除去が不要となる、 C肉の熟成(2度・24時間)が不要となる、D肉のpH測定が不要となる、E生鮮 状態の内臓を輸出できる、F肉の煮沸処理などが不要となる。こうした変更は、輸 出製品のバリエーションが広がるとともにコスト低下につながる。 今回の決定でアルゼンチン産牛肉の全世界デビューの必要条件はそろったが、勝 負はこれからのようだ。まず、極めて厳しい財政事情の中で牛肉生産と輸出の振興 を同時に図らなければならない。国内生産と輸出の振興に向けた新機関設立を主な 内容とする牛肉振興計画(仮称)が、最近ようやく大統領府に提出される見通しに なった。しかし、同機関の運営資金に関しては不安材料が多い。輸出余力の点では、 後手に回る結核とブルセラ病対策、繁殖率と育成率の向上、経営悪化が直接雌牛出 荷につながる畜産事情、衰えない国内消費のために国内価格が輸出価格より有利な ことなどが懸念される。 アルゼンチンの既存市場の拡充と新規市場の開拓は、今後の2国間での協議を通 して展開される。ただし、今回の決定で口蹄疫清浄地域の牛飼養頭数約8千万頭と いわれるブラジルの存在も無視はできない。 「Por Fin!(ついに!)」で飾られる新聞の大見出しに喜びと希望が伝わるが、 畜産関係者には嬉しくも厳しい幕開けに思えるのではないだろうか。
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