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【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 3月2日発】2000年1月下旬、国際獣疫 事務局(OIE)は、ブラジリア連邦地区、ゴイアス州、サンパウロ州、マット・グロ ッソ州、ミナス・ジェライス州、パラナ州をワクチン接種清浄地域とするブラジル政府 の要請を5月の総会で審議することに決定した。
ブラジルでは、非清浄地域の生きた牛および骨付き牛肉を清浄地域で販売することを 禁止している。そのため、従来から非清浄地域のマット・グロッソ・ド・スル州(以下 「南マ州」という。)を主な原料供給元としていたサンパウロ州の食肉処理加工場の稼 働率は、原料不足から60%台に落ち込んでいる。当然、南マ州も従来の市場を失い操 業に支障を来している。
サンパウロ州の一部の食肉処理加工業者は、代替としてパラグアイから生きた牛を輸 入し、稼働率を高める努力を試みた。しかし、パラグアイの現地紙が同国で口蹄疫が発 生したと報じたことから、ブラジル政府は2月初めにパラグアイからの生きた牛の一時 的輸入禁止措置をとり、この措置は現在も続いている。さらに、口蹄疫発生の事実が確 認された場合、骨付き牛肉の輸入も禁止するとブラジル政府が発表したことから、サン パウロ州の牛肉需給はますますひっ迫することが予想されている。
こうした状況の下で、サンパウロ州の牛肉卸売価格は1アローバ(ブラジルの重量単 位で約15kg)当たり約24ドル(2,640円:1ドル=110円)に上昇した。こ れは、南マ州と比べ1アローバ当たり5レアル(約2.82ドル(310円))の差と 言われている。このため、サンパウロ州を通過して本来ならリオ・デ・ジャネイロ州に 出荷されるべき南マ州産の骨付き牛肉が、サンパウロ州で市場価格より15%ほど安い 値段で密売されているという告発が相次いでいる。ブラジルでは、非清浄地域の骨付き 牛肉が清浄地域を通過することは認められているので、効果的な取り締まりは事実上不 可能であるが、ブラジル当局は告発が事実なら口蹄疫清浄地域としての認定を危うくす るものだとして憂慮している。
なお、ブラジル国内の規定では、清浄地域内であっても非清浄国・地域に接する国・ 州境一帯は準清浄地帯(一種の緩衝地帯)と定められている。原則として、この一帯で 飼養されている生きた牛を原料とした牛肉は輸出できないし、また、この一帯で処理し た骨付き牛肉も輸出できないことになっている(一帯を通過するだけなら可能)。
原料不足に悩むサンパウロ州の食肉業界は、対策案を作成し上部団体を通じ政府に対 応を迫ったが、当局からの積極的な対応は今のところないようだ。
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