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【シンガポール駐在員 外山 高士 3月2日発】フィリピンでは、遺伝子組み換 え(GM)作物の試験栽培の賛否をめぐって、議論が白熱している。
これは、99年12月に、大手種子メーカーが、500平方メートルの面積に、 殺虫効果を持つことで知られているGMトウモロコシの試験栽培を開始したことに 、端を発している。 この試験栽培に対しては、先週、28名の農民と5つの非政府組織が、試験の中 止を求めて最高裁判所に訴えを起こしている。彼らは、@GMトウモロコシの安全 性に疑問があること、A現在のフィリピンでは、GMトウモロコシを導入してまで 生産を増加させなければならないほど、供給力が低くないこと、BGMトウモロコ シの導入により生産過剰となった場合に、不利益を受ける可能性があることを挙げ ており、GMトウモロコシの導入の必要がないことを主張している。また、この試 験の開始に当たって、試験ほ場のあるサントス市議会の許可を受けていないことを 取り上げ、試験そのものが合法的に進められていないとしている。 一方、アンガラ農務長官は、農作物の収量や生産性を向上させる技術に目をつぶ るべきではないとして、この試験栽培に肯定的な立場をとっている。また、試験ほ 場は、500平方メートルの面積に限定されており、環境への影響はほとんどない と述べている。さらに、農務長官は、GMトウモロコシはバイオ工学に関する国家 安全性委員会で、1年以上前に試験を開始することを許可しているとして、試験そ のものは合法的に進められたとしている。
また、上院農業委員長も、この試験栽培には多くの専門家が関係しており、環境 に対する危険性はすぐに発見されるであろうことから、この試験は奨励されるべき ものであると述べている。さらに、同委員長は、米国などでは、既に商業ベースで のGM作物の生産が行われており、これらの国々はフィリピンと比べて安全性に対 する基準がかなり厳しいことから、その危険性は低いとしている。
しかし、試験ほ場のあるサントス市では、試験を行っている企業に対し、栽培試 験を中止するよう指示している。同市では、試験を中止しない場合、市議会の許可 を得ないで行っている同試験を、規約違反として訴えるなどの強制的な手段に出る 可能性を見せている。また、一部の環境保護団体は、現在の試験ほ場の設計では、 風によって花粉がほ場の外に出てしまう可能性があるなど、完全に制御された状態 になっていないことを指摘している。
これらに対して、農業長官は、話し合いを通して解決できる問題であるとしてお り、今後、賛否をめぐる両者の動向が注目されている。
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