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ブラジル・アルゼンチン間の鶏肉貿易摩擦収まらず



【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 3月15日発】2月28日、アルゼンチ
ンとブラジルは食品安全基準に関する農業首脳会議をアルゼンチンで開催。その中
でブラジル産鶏肉の輸出衛生基準が協議された。

 この結果、アルゼンチンはブラジル産鶏肉に対し従来からの国単位の無菌証明
(Aフォーム)に加えて、ロット単位での無菌証明(Bフォーム)の提出義務を要
求した。

 これは、数年前からブラジル産の安価な鶏肉がアルゼンチンの鶏肉産業を脅かし
ており、99年1月のブラジル通貨レアルの切り下げで事態が深刻化した貿易摩擦
が背景にあるようだ。

 アルゼンチンは以前からブラジル最大手の鶏肉業者サディア社を敵視するなど、
この問題は古くて新しい問題で、両国間には輸出枠などを取り決めた紳士協定があ
った。しかし、99年10月にこの協定が破棄され、ブラジルが後払いを条件に枠
を無視し低価格で鶏肉を大量輸出したため問題が再燃した。

 CEPA(アルゼンチン養鶏加工協会)がブラジルのダンピングが疑わしいとし
てアルゼンチン経済省の国家貿易委員会に事実調査を申請したのが97年、調査開
始の決定が99年1月。以降、調査が続けられ99年12月にダンピングの事実あ
りのクロ裁定、アルゼンチン政府は6ヵ月以内に対策を講じることになった。しか
し、同国外務省は法的に何もできないとの判断を示した。

 煮え切らないアルゼンチン政府の態度に同国エントレリオス州(ブラジル産鶏肉
の多くはこの国境を越えてアルゼンチンに入る)の養鶏業者団体が、同州の連邦裁
判所に苦境を訴えた。その結果、ダンピング問題が解決するまでブラジルの月間輸
出枠を3,742トンとすべき旨の判決が出た。しかし、アルゼンチン経済省は、
国内判決は国家間の貿易問題に無効として却下、今年に入って1月だけでブラジル
産鶏肉の輸入量は7千トン以上に達している。

 いまだに解決しないこの問題に世界貿易機関(WTO)提訴も検討されたようだ
が、今回のアルゼンチンの衛生規制措置が今後どのように推移し、事態に影響を及
ぼすか成り行きが注目される。

  両国間には、鶏肉以外にも2つの畜産物貿易摩擦がある。1つはブラジルの安価
な豚肉輸出で、アルゼンチンの養豚業者は補助金付きダンピングと非難。もう1つ
は、逆にアルゼンチンからの安価な生乳輸出で、ブラジルはダンピングと疑ってい
る。

 こうした貿易摩擦は畜産物に限らず工業製品でも生じており、これら貿易摩擦の
背景には、99年1月のブラジル通貨レアルの切り下げでブラジルの輸出競争力が
増したことがあり、今までくすぶっていた問題が一挙に噴出したようだ。


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