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【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 3月16日発】EU常設獣医委員会は、3月9 日、EUへ輸入される食肉および食肉製品中の成長ホルモン等非承認物質の検査お よび承認されているが残留の上限値が定められている動物用医薬品の残留量検査に ついて、米国の実施体制がEU基準を満たすものとなったと認めることを決定した。 この結果、改善が十分でない場合に予定されていた米国産食肉・食肉製品の全面輸 入禁止計画は、実行されることなく解除されることとなった。 EUでは、天然型か合成型かを問わず、成長促進剤としてのホルモンの使用を禁 止しており、成長ホルモンを使用した牛肉の輸入も禁止している。昨年4月、米国 産牛肉および肝臓のサンプル検査を行ったところ、その12%に成長ホルモン(ト レンボロン、ゼラノール、メレンゲステロール)の残留が認められたことから、米 国側のチェック体制の不備が判明し問題となった。EU委員会では、昨年4月30 日、米国が十分な改善措置を講じない場合には、同6月15日以降の食肉等の輸入 を禁止するという決定をした(1999/301/EC)。この決定については、 その後の米国の対応状況を勘案し、輸入禁止の開始時期は3度延期され、本年3月 15日からとなっていた。 EU理事会指令(96/23/EC)では、家畜・畜産物に関し、加盟国および EUへの輸出国が、非承認物質を含まず残留基準以上の特定物質を有しない旨を保 証する、残留モニター(監視)の実施を義務付けている。また、残留モニター計画 はEUからの改善要求に基づき更新しなければならないこととなっている。EUは、 昨年6月および11月、本年1月に米国でホルモン非投与牛肉の生産体制に関する 調査を実施した。1月の調査で残留検査法に改善が必要と指摘されたことを踏まえ、 米国は、特に特定の残留検査の外部委託が可能な承認検査機関について、残留モニ ター計画を更新した。米国の指定検査機関における検査法が改善されるまでの間は、 適切な公認検査法が実施できるほかの検査機関に当該検査を委託することとしてお り、委託契約手続きを進行中である。 なお、EUのホルモン牛肉の輸入禁止措置については、98年2月に世界貿易機 関(WTO)により衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)違反と裁 定されたが、EUは健康を害する恐れがあるとして、その後も輸入禁止を継続して いる。このため、米国およびカナダはそれぞれ昨年7月29日および8月1日から、 EU産食肉・食肉製品などに対し100%の報復関税を適用するという制裁措置を 発動した。内容はそれぞれの国の損害額とされる1億1,680万ドル(124億 円:1ドル=106円)および1,130万ドル(12億円)を基準に決定された が、トリュフ、フォアグラ等の特産品も対象とされた貿易被害はEU側にとって甚 大である。 EU、米国ともにこのような制裁が建設的でないことを認めており、米国は、市 場の確保に資するため、成長ホルモン非投与牛肉の輸出体制整備を進めてきた。今 後は、非ホルモン牛肉のEUへの輸入アクセスが改善されると考えられることから、 ホルモン牛肉の輸入禁止措置に対する補償(制裁)のあり方について、EU・米国 間の話し合いが開始されるものと期待されている。
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