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【シドニー駐在員 野村 俊夫 3月15日発】豪州の各州政府の農業大臣は、3 月3日、メルボルンで会合し、連邦政府が提案している酪農乳業制度改革(生乳生 産販売の完全自由化と酪農家所得補償)を実現するべく、各州の飲用乳制度を撤廃 することに基本合意した。 会合では、飲用乳制度の恩恵に浴しているニューサウスウェールズ(NSW)州、 クインズランド州および西オーストラリア州が最後まで反対したが、単独でも撤廃 を実施するというビクトリア州の強硬な姿勢を前に、やむなく足並みをそろえるこ ととなった。 ただし、合意に当たっては、@酪農乳業制度改革が地域社会に及ぼす影響を十分 に監視すること、A地域対策を協議する特別委員会を設置すること、B各州の食品 安全対策について検討を加えることが条件として付記された。 さらに、地域救済計画や農業地域計画などの既存の諸政策が改革の影響を受ける 地域社会への対策と成り得ること、連邦および州政府がこれらの諸政策について各 地域に周知徹底させることについても、併せて確認された。 今回の基本合意により、現在、連邦議会で審議されている酪農乳業改革法案の最 大の懸案に解決のめどが立ったため、当該法案の成立と本年7月1日からの改革実 施がほぼ確実な情勢となった。 一方、こうした状況を背景に、大手飲用乳メーカー間の合併交渉が活発に繰り広 げられている。 豪州の飲用乳メーカーは、デイリーファーマーズ(酪農組合)、ナショナルフー ズ(豪州資本)、パーマラット(イタリア系国際資本)の3社が中心となっている が、ナショナルフーズはデイリーファーマーズに合併を提案しており、デイリーフ ァーマーズは乳製品メーカーのボンラック(酪農組合)との合併を模索している。 パーマラットはナショナルフーズとも合併交渉していると言われており、まさに目 が離せない状況となっている。 また、これとは別に、改革後の自由な生乳市場を見込んだ各メーカーの生産者へ の働きかけも活発化している。 デイリーファーマーズは、先般、NSW州内の組合員に、7月から9月までの3 ヵ月間、37セント/リットル(約24円:1豪ドル=65円)の飲用乳価を支払 うと提示した。これは、同州の現在の最低飲用乳価52.4セント/リットルと比 べると15.4セント/リットル(約30%)の低下になるほか、3ヵ月間に限定 したのは、その後の情勢変化に柔軟に対応するためとみられている。 ナショナルフーズは、年間150万リットルの飲用乳を供給する大規模生産者や 同4百万リットル以上の酪農組合を対象に、直接供給契約を結ぶことを提示した。 実際の取引価格は入札方式で決めるとされているが、契約数量オーバー分には低乳 価が適用され、自社の品質保証システム(遺伝子組み換え飼料の使用禁止など)を 義務付けるなど、生産者にもリスクを負わせる内容となっている。 豪州の酪農乳業界は、改革後の新環境に向けて、急ピッチで動きはじめたと言え よう。
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