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USDA、新たなオーガニック基準を提案



【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 3月16日発】米農務省(USDA)は3月
7日、有機(オーガニック)食品の生産、表示、認証等に関する新たな全国統一基
準案を公表した。これは、97年12月公表の当初案に対して寄せられた約27万
6千件ものパブリック・コメントや全国オーガニック基準委員会(NOSB)から
の勧告を踏まえて見直されたものである。

  グリックマン米農務長官は、同日の記者発表の席で、「これは、世界中で最も包
括的かつ厳格なオーガニック基準であり、まさに米国の消費者やオーガニック農家
が求めていたものにほかならない」と述べている。

  当初案では、政治的配慮などもあって、特に、@遺伝子組み換え技術に由来する
食品(原料も含む。以下同じ。)、A放射線照射が施された食品、B下水汚泥を肥
料に用いて生産された食品の扱いについての結論が先送りされていた。しかし、今
回USDAは、「(上記の)生産手法が環境または人間の健康にとって受け入れ難
い危険性をもたらすとする科学的根拠は見出せないものの、寄せられたコメントの
大宗を占める拒否反応を考慮し、(上記食品についての)“オーガニック”表示の
適用を禁止する」としている。

  また、オーガニック農産物の生産・取扱基準に関しては、当初案通り、土地につ
いて、収穫前の3年間は、化学肥料・農薬等が投入されていないことなどを条件と
しているが、生の家畜ふん尿の使用基準については、最終的な施肥と作物の収穫ま
での合理的な期間の設定等、安全性確保のための科学的知見をさらに集約していく
必要があるとしている。

 一方、家畜に係る基準については、@オーガニックとして生産された飼料(ビタ
ミンやミネラルなどの補助飼料を除く。)を100%給与しなければならない(注
:当初案では20%までの非オーガニック飼料の給与が認められていた。)、A成
長促進のためのホルモン剤に加えて、抗生物質についても全面的に使用してはなら
ない(注:当初案では、抗生物質についての例外規定が設けられていた。)、B悪
天候などによる一時的な場合を除き、恒常的な舎飼いや係留を行ってはならず、屋
外(特に、反すう家畜については放牧草地)へのアクセスが確保されていなければ
ならない(注:当初案では、必要な場合は、自由な出入りが制限される環境下に置
くことができるとされていた。)といった、より厳格な制限が加えられている。

  「91年以来厳格な基準を実践してきた」という全米最大手のオーガニック乳業
会社であるホライズン・オーガニック社(注:同社は、牛乳パックのスペースを利
用して、消費者に「USDAの(当初)案には失望した」とのコメントを出すよう
呼びかけていた。)は、早くも、この見直し案に対する歓迎の意を表明しているが、
全米食品加工協会(NFPA)などからは、「厳しすぎる」との懸念の声が上がっ
ており、オーガニックというニッチ(隙間)マーケットにエントリーする者すべて
にとっての追い風というわけでもなさそうだ。

  USDAは、99年のオーガニック食品の小売販売額を約60億ドル(6,36
0億円、1ドル=106円)と見積もり、また、全米には、小規模層を中心とした
約1万2千戸のオーガニック農家が存在するとしている。今回の見直し案に対して
も、90日間のパブリック・コメント期間が設けられており、年内にも最終規則を
制定させたいとの意向である。


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