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EUの豚肉需給に改善の兆し



【ブラッセル駐在員 井田 俊二 3月23日発】EUの豚枝肉卸売価格(市場参
考価格)は、今年に入ってから前年を約20%程度上回る水準で推移している。2
000年3月12日現在の市場参考価格は、枝肉100kg当たり127.5ユー
ロ(約1万3,300円:1ユーロ=104円)で、前年同期の103.3ユーロ
(約1万700円)を23%上回っている。また、これは年初の市場参考価格11
6.9ユーロ(約1万2,200円)と比較して9%上昇しており、長期間にわた
り低迷していた豚肉価格にようやく回復の兆しが見られている。

 EUにおける近年の豚肉需給は、高水準な豚肉価格(96〜97年)を背景とし
て急速に増産が進み、その後生産過剰となった。このため、98〜99年の豚肉価
格は低迷を続け、特に98年末から99年初にかけて、市場参考価格が一時90ユ
ーロ(約9,400円)を下回る記録的な低水準となった。また、豚肉価格の低迷
が長期化した結果、豚生産農家の経営状況が悪化し問題となっていた。

 最近の豚肉価格の上昇は、豚肉生産量の減少が主な要因とみられている。EU統
計局(EUROSTAT)によると、99年12月現在のEU豚飼養頭数は、1億2,42
7万頭(前年同期比0.8%減)となった。また、2000年の豚と畜頭数は、2
億775万頭(同1.0%減、四半期ごとには、1〜3月:1.6%減、4〜6月
:0%、7〜9月:0.5%減、10〜12月:1.7%減、)で、今後徐々に豚
肉生産量が減少すると見込まれている。ただし、国別の豚と畜見込み頭数は、イギ
リス(同9.5%減)、オーストリア(同7.6%減)など10ヵ国で減少する一
方、スペイン(同2.4%増)やデンマーク(同2.3%増)で増加しており、状
況に差が見られる。

 また、最近の豚肉の価格動向を反映して、豚生産農家の経営状況がようやく改善
しつつあるケースが見られる。豚肉の過剰生産対策として、いち早く豚の減産に取
り組んだイギリスでは、2000年3月12日現在の豚肉市場価格が枝肉1kg当
たり90ペンス(約152円:100ペンス=168円)まで回復した。豚生産農
家の経営分岐点となる豚肉価格は約95ペンス(約160円)とみられており、約
2年間続いた生産コスト割れの経営状態からようやく脱却できる水準に近づきつつ
ある。

 一方、EU委員会では、最近の豚肉価格動向等を反映して、これまで豚肉需給対
策として講じてきた豚肉民間在庫助成の解除および豚肉輸出補助金の引き下げを実
施してきている。3月14日には、豚肉輸出補助金をさらに約12.5%引き下げ
ることを決定した。

  ただし、今後の豚肉需給の回復については限定的であるとの見方もある。影響を
及ぼす要因として、環境規制の強化、衛生問題、牛肉等ほかの食肉との相対的な価
格動向等不確定なマイナス要素が指摘されており、まだ豚肉の需給回復に向けて十
分な条件が整っているとは言えないようである。


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