ALIC/WEEKLY


畜産物と大豆にかかわる2つの議論(米国)



【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 3月23日発】先ごろ、当地ワシントン・ポ
スト紙をはじめとするメディアに、「学校(給食)では、肉の代わりに大豆もOK」、
「大豆は、乳牛のようには乳を出さない」という、畜産物と大豆にかかわる2つ見
出しが踊った。

  1つ目は、米農務省(USDA)が行う学校給食事業の献立の中で、大豆などの
たんぱく質食品が、食肉の代替品として認められたという3月9日付けの報道であ
る。

  現在の全国学校昼食事業(注:これ以外にも、朝食事業や特別牛乳事業などの補
完的事業がある。)においては、@飲用乳、A肉または肉の代替品(魚、チーズ、
卵等)、B豆・種子類(落花生、大豆等)、C野菜・果実、D穀類(パン、めん類
等)をバランスよく組み合わせた献立を提供することとされている。

  今回の見直しは、メニューにバラエティーをもたせるとともに、脂肪(特に、飽
和脂肪酸)の摂取を抑制するとの観点から、肉の代替品(上記A)として、重量ベ
ースで30%までの使用が認められていた野菜由来のたんぱく質食品の制限を撤廃
するとともに、野菜以外のたんぱく質食品(フルーツ・ピューレ、カゼイン等)も
これに追加するというものである。

  USDAは、99年度で、約53億ドル(5千6百億円、1ドル=107円)の
予算を投じ、約9万6千の学校や施設に通う約2千7百万人の学童に対し昼食を供
給しているが、日本の学校給食とは違い、複数のメニューの中から子供たちが好き
なものを選択できる場合が多いため、実際にこうした見直しが行われても、ハンバ
ーガーの中身が、完全に豆腐に取って代わられるような事態を想定することは難し
い。

  しかし、学校給食事業が、学童に対して栄養のある食事の機会を提供するという
目的のほかに、国内の余剰農産物の買い上げ・提供を通じ、間接的ながらも、農産
物価格や農家所得の支持効果を有しているということにポイントを見いだすべきで
あろう。

  今回のUSDAの改正規則が公表された3月9日、牛肉の生産者団体である全国
肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、「大豆は、栄養学的にも牛肉の代替品には
なり得ないというわれわれの主張を完全に無視し、子供たちを栄養不足の危険にさ
らす、無責任なもの」という抗議声明を出したが、「4年越しの要求が実った」と
いう大豆生産者団体の思惑通り、改正規則の施行日である4月10日から、新しい
メニューがお目見えする可能性がある。

  2つ目は、大豆飲料の小売表示に関し、酪農・乳業団体である全国生乳生産者連
盟(NMPF)が、2月14日、米保険社会福祉省食品医薬品局(FDA)に対し
て行った申立てに関する2月29日付けの報道である。大豆飲料は、消費者の健康
志向を背景に、全米でも、96年には約5千万リットルだった売上げが、99年に
は約1億3千万リットルにまで増大しているという。

  NMPFは、「大豆飲料の多くが、牛乳のようなパッケージに“ソイ・ミルク”
(豆乳)と表示されているが、牛乳とは栄養価も組成も全く異なり、“ミルク”と
いう用語の使用も、乳牛由来のものに限るとする連邦基準に違反する」と主張して
いる。

  一方、大豆関係業界の反応は、「“ソイ・ミルク”という用語は、古代中国の時
代から用いられているものであり、政府には、これが1つの基準(名称)となるよ
う働きかけていく」と、対決姿勢を見せている模様である。今のところ、こうした
動きに対するFDAの反応は明らかにされていない。


元のページに戻る