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体制整備が進むEUのBSE対策



【ブラッセル駐在員 井田 俊二 5月4日発】EU委員会は5月3日、すべての
加盟国に対し、牛海綿状脳症(BSE)の感染源となる可能性が高い特定危険部位
(SRM)について食料および家畜飼料として使用することを禁止し、SRM除去
を義務化する提案を行った。

 すべての加盟国で除去が義務化されるSRMは次の通りである。
 @	12ヵ月齢を超える牛、羊および山羊の頭がい(脳および眼球を含む)、扁桃
  およびせき髄
 A	12ヵ月齢を超える牛の回腸
 B	すべての羊および山羊の回腸

 また、BSEに感染する危険性が相対的に高いイギリスおよびポルトガルでは、
SRMとして次の部位が追加される。
 @	6ヵ月齢を超える牛のすべての頭部(舌を除く)、胸腺、脾臓、腸およびせ
  き髄
 A	6ヵ月齢以上の牛のせき椎(ポルトガル)
 B	30ヵ月齢以上の牛のせき椎(イギリス)

 さらに、この提案では、と畜の際にBSEに感染している家畜の脳が血管を通じ
て血液を汚染する危険性を除くため、いくつかのと畜方法を禁止している。

 この提案は、5月10日の常設獣医委員会で審議され、承認された場合には、20
00年7月1日から施行される見込みである。

 SRM除去をすべての加盟国に義務付ける提案は、97年以降審議が繰り返され
たが、実現に至らず廃案となっていた。これは、BSE非発生国がSRM除去に伴
うコスト上昇等を理由として提案に合意しなかったためである。このため、現在で
は、原産家畜からBSEが発生したことのある8加盟国(ベルギー、デンマーク、
フランス、アイルランド、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガル、イギリス)が、
SRM除去を実施している。

 しかしながら、最近では、SRMの危険性を裏付ける科学的な報告に加え、2000
年3月、デンマークで初めて原産牛からBSEが発生したため、非発生国を含めて
現行のBSE対策の的確性が疑問視されてきた。こうした中、EU委員会のバーン
委員(公衆衛生/消費者保護担当)は、2000年3月、今後BSE対策を強化・徹底
していく方針を明らかにした。この方針に基づき、EUでは、4月5日、すべての
加盟国に対しBSE検査を義務付け、2001年1月から実施することを決定した。

 また、牛肉の由来を特定することなどを目的とした、牛肉表示の義務化に関する
提案は、2000年4月18日、農相理事会で承認された。今後、欧州議会における共
同審議のプロセスを経て、牛肉表示の義務化(農相理事会案では、第1段階:2000
年9月、第2段階:2002年1月より実施)が決定する見込みである。

 EUのBSE対策は、発生国と非発生国間で統一されていなかったが、今後は諸
対策の実施義務化により、EUレベルで体制整備が進んでいくものとみられる。


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