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鶏肉輸入制度変更の動き(フィリピン)



【シンガポール駐在員 外山 高士 5月4日発】フィリピン農業省は、貿易産業
省と共同で、鶏肉の輸入制度の改革についての検討を開始している。この中では、
関税率の引き上げや、衛生検査体制の強化など、多岐にわたる対策が検討されてい
る模様である。

 同国の鶏肉の輸入は、ガット・ウルグアイラウンド(UR)合意に基づき、96
年からミニマムアクセス数量(MAV)を決定し、関税化されている。2000年の鶏
肉のMAVは18,790トンで99年と比べ1,044トン増となっている。なお、MAV
枠内の関税率は45%、枠外は50%となっている。

 しかしながら、同国の鶏肉の輸入量は経済の急速な発展に伴い急増しており、9
7年2,770トン、98年3,655トン、99年24,701トン、2000年1月は1,660トン
(前年同月比約4.3倍)となっており、MAV枠を超えて輸入される状況となって
いる。また、これらの鶏肉の主な輸入相手国は、米国が最も多く、次いでカナダ、
豪州となっている。さらに、輸入された鶏肉の価格は、1kg当たり45〜50ペソ
(約126〜140円:1ペソ=約2.8円)と、国産鶏肉の1kg当たり63〜66ペソ(約
176〜185円)よりも安価であることから、国内農家販売価格が、生産コストの40〜
42ペソ(約112〜118円)を大きく下回る30ペソ(約84円)で取り引きされるなど、
国内生産に大きな影響を与えている。

 このため、フィリピンブロイラーインテグレーター協会は、米国産鶏肉について、
実態の輸入数量は統計上の数量を上回るものとみており、相当な量の鶏肉が、関税
を支払わず、違法に安く輸入されているとして、政府に対して即時に鶏肉の輸入を
禁止することを要求している。また、国民生活を保護するため、現在国会で審議中
の、日用品に係る既存の関税率を大統領の一存で変更できるようにする法案の早期
成立および実施についても要求している。

 一方、農業省では鶏肉輸入に係る衛生検査体制の強化を検討している。これは、
米国との取り決めによる冷凍鶏肉の消費期限が6ヵ月であるにもかかわらず、99
年7月時点での輸入冷凍鶏肉の在庫が、現在もまだ冷凍庫に保存されたままになっ
ているためで、現在、これらの鶏肉を調査し、国内で消費されないように検査体制
の強化を図ることとしている。

 フィリピン政府は、昨年、輸入量の急増した免税店における食肉輸入を禁止する
などの政策を打ち出している。また、養鶏農家における労働者が、今年だけで4千
人以上も職を失うなど、労働者対策としても深刻な事態に発展している。同国政府
は、食料の自給率向上と、貧困対策や経済復興の担い手としての、農業に対する保
護を強めているとみられており、今後の動向が注目されている。


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