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【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 5月18日発】イギリス農漁食料省は、5月8 日、93年から98年における家畜用抗生物質等の国内販売量の推移を発表した。 イギリスでは、人の医療分野での抗生物質の耐性問題に対応し抗菌性物質製剤の 効き目を維持するために、同製剤の使用を減らす政策がとられており、この調査は、 その一環として実施されたものである。 概要は以下の通りである。 ○合計販売量について 治療および成長促進に使用される抗生物質およびその他の抗菌性物質製剤の販売 量は、96年までは年々増加したが、97年、98年は減少し、98年の販売量は554トンで 94年とほぼ同水準となった。6年間の平均年間販売量は584トンで、食用家畜向けに 555トン(95%)が販売された。 ○食用家畜向け製剤販売量について 食用家畜向け抗菌性物質製剤について、治療用は83〜90%で、成長促進用は10〜 17%だった。成長促進用はアボパルシン(avoparcin)が使用中止となった97年に急 減したが、98年には再び増加した。 製剤の種類別に見ると、テトラサイクリン類、トリメトプリム/スルホンアミド 類およびベータ・ラクタム類(ペニシリンを含む。)が全体の72〜81%を占めた。 テトラサイクリン類が42〜50%で最も多かった。大半のテトラサイクリン類は、呼 吸器病等の治療用飼料として豚および鶏に使用された。90年代に豚の繁殖・呼吸器 症候群(PRRS)の発生に伴い大量のテトラサイクリン類が使われた。本疾病の より良い理解と管理、ワクチンの導入が同製剤の販売減少に寄与しているようだ。 マクロライド類(タイロシン等)とアミノグリコシド類(ストレプトマイシン、ネ オマイシン等)の販売が増加した一方、フルオロキノロン類は93年の承認以降約1 トン(0.2%)とわずかな量にとどまっている。 また、治療用製剤の投与経路については、飼料に添加されて投与されるものが81 〜84%と最も多かった。 治療用製剤を畜種別に見ると、大半は豚および鶏に使用されているようだが、68 〜72%は複数の畜種向けの使用が認められている製剤だったため、正確な畜種別内 訳については本調査で把握できなかった。なお、成長促進用製剤はすべて複数の畜 種向けに販売されている。 ○今後の予定について 本調査は今回が初めてであるが、今後もより多くの情報を得るため調査を継続す る予定である。抗菌性物質製剤耐性調査の結果が出れば、販売動向と耐性パターン との比較が可能となろう。 抗菌性物質販売量(有効成分量)の推移 (単位:トン、%)
年 次 |
93 | 94 | 95 | 96 | 97 | 98 |
食用家畜用 うち治療用 成長促進用 その他治療用 |
475 392 83 20 |
533 445 88 24 |
608 486 122 32 |
629 533 96 30 |
564 495 69 32 |
522 433 89 32 |
合 計 (対前年増減率) |
495 (-) |
557 (13) |
640 (15) |
659 (3) |
596 (▲10) |
554 (▲7) |
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