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【シンガポール駐在員 外山 高士 5月18日発】フィリピン農業省はこのほど、 2000年第1四半期の農業生産額を発表した。これによると、畜産分野では、99年第 1四半期の82億4千万ペソ(約214億円:1ペソ=約2.6円)を3.1%上回る85億ペソ (約221億円)となり、昨年に引き続き増加傾向で推移している。 畜産分野を部門別に見ると、最も伸び率の大きかったものは水牛で、前年同期比 6.3%増となった。これに続いて酪農業が6.1%増、養豚業3.2%増、ヤギ2.4%増、 肉牛2.0%増と、いずれも増加傾向となっている。また、家きん部門でも、鶏肉が3 .8%増となったことから、同部門全体では4.4%増と大きな伸びを記録している。こ のように、畜産業全体は、引き続き拡大の傾向を示している。 しかしながら、農業全体では前年同期比0.1%増と、ほぼ前年並みとなっている。 これについて農業省では、穀物部門、特にコメとトウモロコシおよびサトウキビの 生産量の減少が、主な要因となっているとしている。今年第1四半期におけるコメ とトウモロコシの生産量は、天候が不良であったこと、病害虫が発生したことなど により、それぞれ286万トンおよび101万トンとなっており、前年同期の299万トンお よび127万トンに比べ、それぞれ4.6%および20.5%と大幅に減少している。また、 農業省では、99年第1四半期は、98年に発生したエル・ニーニョなどの異常気象に より減少していた穀物生産量が、コメで34.9%増、トウモロコシで61.8%増となる など飛躍的に増加した時期でもあったことから、今年は相対的に減少に転じたこと になったものとしている。また、サトウキビについては、主産地であるルソン島南 東部とネグロス島において雨量が多かったことから、983万トンと、前年同期の1,0 35万トンと比べて約5%の減少となっている。 農業省では、今後の不安要因として、農家販売価格の低下と、ミンダナオ島など の治安の悪化を挙げている。これは、今年第1四半期の鶏肉と穀物の価格が、それ ぞれ前年同期比で14.4%および10.4%の低下となっていることから、これ以上の価 格の低下は、生産農家に大きな損害を与えるものと懸念されている。また、ミンダ ナオ島における一部住民と政府軍との衝突は、国内で生産されるトウモロコシとコ メの、それぞれ65%および30%を占めるミンダナオ島の農民約10万人の生活を脅か しているとしている。 しかし同省では、今年の農業生産額の成長率を4%と予想しており、引き続き増 加傾向にある畜産業の拡大に、大きな期待を寄せている。
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