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【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 5月18日発】近年、カナダは、豚肉の国内 生産を着実に拡大させながら、輸出量を大幅に伸ばしてきており、99年には、前年 比19.9%増の51万9千トンを輸出するまでに至っている。主な輸出先は、全体の過 半を占める米国、次いで日本、香港の順となっている。 こうした中で、先ごろ、カナダ統計省は、今年4月1日現在の豚の飼養頭数が、 全体で1,220万頭(前年比▲0.3%、本年1月比▲0.6%)と、わずかながら減少し ているとの報告を出した。しかし、このことをもって、カナダの国内生産に陰りが 見え始めたとするのは早計ではないだろうか。 カナダでは、飼料穀物の価格が低水準で推移する中で、98年には落ち込んだ豚価 も、最近では上昇を続けているなど、養豚農家の経営環境は良好な状態にある。 また、小規模農家を中心に、飼養戸数は減少しているが、1農家当たりの飼養規 模は拡大しており、生産構造は着実に変化しているものとみられている。 さらに、繁殖雌豚の頭数が、前年より約2%増加していることなどを考え合わせ ると、国内の生産基盤は、むしろ強化されてきていると見るべきではなかろうか。 一方、飼養頭数の変化は、地域ごとに異なる動きを示している。近年においては、 主産地である東部から、飼料穀物の生産地帯であり、環境面でも制約が少ない西部 へと、生産のシェアが移ってきている。その傾向は、今回の報告でも見られ、東部 のケベック州においては、飼養頭数が1年前に比べて約3%減少しているのに対し、 西部のサスカッチュワン州では、約10%増加している。 と畜頭数を見ると、今年第1四半期は、前年同期比で3.7%(前年第4四半期比1 .5%)の増加となっており、これは、食肉処理施設の能力向上によるところが大き いとされている。カナダの処理施設は、米国に比べ小規模であり、これが国内生産 に一定の制約を与えてきたとも言え、米国に生体豚として輸出され、最終的に同国 内でと畜処理されるケースも増えていた。しかし、例えば最近では、最大手の食品 加工企業であるメープル・リーフ・フーズ社が、1日1シフト当たり9千頭のと畜 能力を持つ新工場をマニトバ州に新設するなど、西部各州を中心に、パッカーの資 本投入が行われ始めている。このため、国内での処理に向けられる頭数が増加し、 今年第1四半期の生体豚の輸出頭数は、前年第4四半期に比べマイナス11.3%(前 年同期比▲4.2%)と、大幅に減少している。 以上のようなことから、カナダにおける豚肉の輸出余力は、衰えるどころか、逆 に、西部各州を中心に増大していると見て間違いなさそうである。 こうしたカナダの豚肉輸出の状況について、米農務省も、カナダからの対米輸出 の増大に加え、アジア市場における米国産および欧州産のシェアをも脅かす可能性 があるとして、警戒感を抱いている模様である。
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