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【シドニー駐在員 野村 俊夫 5月26日発】豪州連邦政府に任命された酪農乳 業調整委員会(DAA)は5月18日、7月1日から始まる酪農乳業制度改革に向け て、酪農経営補償金の交付申請受付を開始した。受付期間は8月17日までの3ヵ月 間とされている。 DAAは、法律専門家の委員長と、酪農乳業界代表(2名)、政府委員、独立委 員の計5名のメンバーで構成されており、その主な任務は、酪農乳業構造調整事業 計画(DSAP)に基づき、各酪農経営者から提出される申請書類を審査して補償 金の受領資格を認定することと、交付額を決定して豪州酪農庁(ADC)に交付を 命ずることとされている。 また、DSAPの財源として7月から飲用牛乳に課徴金(11豪セント(約7円) /リットル:1豪ドル=約62円)が賦課されるが、DAAはこの財源を管理するとと もに、当該課徴金の賦課期間(8年間の予定)を2001/02年度中に再検討することと されている。 DSAPによると、補償金の受領資格者は、99年9月28日午後6時30分(連邦政 府の補償パッケージ公表時)に酪農経営に携わっていた者で、かつ、98/99年度に生 乳出荷実績を有する者とされている。 ただし、酪農経営者は、補償金の交付申請に当たり、99/2000年度と翌年度の農場 経営収支見積書(FBA)を作成してDAAに提出しなければならない。FBAの 提出は、新制度が経営に及ぼす影響を酪農経営者自身に適確に認識してもらうため の措置としており、公認会計士の署名が義務付けられている。 酪農経営者は、DAAから受領資格を認定され、かつ、FBAを提出すれば、98 /99年度の飲用向け出荷量に46.23豪セント(約29円)/リットル、加工向け出荷量に 8.96豪セント(約6円)/リットルを乗じた額の補償金を8年間の分割払い(四半期 ごとの交付)で受領できることになる。また、大手銀行は、一定の割引を条件に、 補償金を一括受理できる金融プランを提示している。酪農経営者は、今後、補償金 の受領を前提とした経営方針を決めることになるが、酪農を継続する義務はなく、 廃業も選択肢の1つに含まれる。 ちなみに、今後は生乳取引が完全に自由化されるため、乳価の動向によっては補償 金だけで酪農を継続できる保証はない。事実、大手飲用乳メーカーの1つは、最近、 現行より40〜50%も低い水準の飲用乳価を提示して酪農経営者を失望させた。こうし た動きに対して、低乳価の制定を求める声も上がっているが、そもそも今回の改革が 生乳取引の規制撤廃を目指したものであることを考えれば、現実的な意見とは言い難 い。第1回目の補償金交付は10月中旬に行われる予定となっているが、多くの酪農経 営者が極めて厳しい選択を迫られるのは間違いないと思われる。
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