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【ワシントン駐在員 樋口 英俊 5月22日発】クリントン大統領は5月18日、 EUのホルモン投与牛肉輸入禁止問題などに対する制裁対象品目について、定期的 なローテーションを実施していくことを含む法案に署名した。この法律の規定に基 づき、米通商代表部(USTR)は、同法の施行後30日以内に対象品目のローテー ションを開始し、以降6ヵ月ごとに品目を入れ替えていくこととされている。 EUのホルモン投与牛肉の輸入禁止措置については、世界貿易機関(WTO)にお いてWTO協定違反と認定されたにもかかわらず、EUが当該禁止措置を継続した ため、米国政府はWTOのお墨付きを得て、昨年7月29日からEUに対する対抗措置 を発動していた。対抗措置の内容は、WTO紛争解決機関(DSB)が承認した損害 額の範囲内で、牛肉、豚肉、ハムなどの食肉製品およびトマト、トリュフ、フォアグラ などの特産品その他のEU産輸入品に対する100%の関税率の適用というものであっ た。 EUは当該措置の発動後も、依然として輸入禁止措置を撤回する動きを見せないた め、米国は、食肉関係団体などからの強い働きかけもあり、対象品目を定期的に入れ替 えることを通じて、より効果的な制裁を行うことに踏み切った。定期的なローテーシ ョン方式の導入を積極的に議会などに要請してきた全国肉牛・牛肉生産者協会(NC BA)や米国食肉協議会(AMI)は、今回の法案成立を歓迎するコメントを発表し た。AMIのボイル会長は、「EUの非妥協的態度は、これまでのアプローチが効果的 でなかったことを示している。ローテーション方式の導入により、EU加盟国は、WT Oのルールに従わない代償を確実に払うことになる」と述べた。ちなみに、NCBA が同方式の導入に積極的に関与するようになった背景には、EU加盟国の農相の「報 復関税の対象となっても、業界は、簡単に適応して通常どおりのビジネスを継続でき る」とする発言があったと報じられている。 NCBAなどは、ローテーション方式の採用で、より多くの異なる業界が影響を被 り、それらの業界からEUに対してWTO裁定受け入れの圧力が増すことを期待して いる。 一方、EUは、今回の米国の動きについて、対抗措置の対象品目を自国のみで決定 することは、いかなる対抗措置もDSBによって認められなければならないとのW TOの原則に反するとして、WTOへの提訴も含めた対応を検討しているとみられ る。 対象品目については、当初の対抗措置の発動時に既にWTOへ提出している暫定品 目リストの中から選定されるとみられており、問題は生じないとの見解もあるが、実際 に品目を選定するUSTRが品目リストの大幅な改正には消極的との見方もあり、今後 のリスト作成の動きが注目されている。
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