ALIC/WEEKLY


豪州和牛協会がシンポジウムを開催


【シドニー駐在員 幸田 太 11月9日発】豪州和牛協会(AWA)は、11月
3日から6日までの期間、クィンズランド州で年次総会を兼ねたシンポジウム(Wo
rld Wagyu Symposium 2000)を開催した。シンポジウムには、アメリカなどの各地
からパネラーが招かれ、豪州の和牛生産を取り巻く情勢について意見交換が行われ
た。

 AWAは、日本の牛肉輸入自由化が行われた年、91年に設立された任意団体であ
り、国内6州に350人のメンバーを有し、約4千頭(豪州肉用牛飼養頭数2千2百
万頭)の豪州和牛を任意登録している。AWAの事務局は、豪州国内で豪州和牛の
生産を行う研究者や生産者がその運営を行っており、豪州和牛の登録がその主たる
活動となっている。

 3日間にわたったシンポジウムへの参加者は、AWAの会員である和牛繁殖生産
者、大学の研究者、フィードロット生産者、マスコミなどであり、合計約150名に
のぼった。

 シンポジウムは、テーマごとにパネラーが基調講演を行い、その後、パネラーと
参加者が意見交換を行う方式で進められた。各テーマと討議の概要は次のとおりで
あった。

 @遺伝子判定テスト
  マーブリングの形成に影響を及ぼす遺伝子テスト
 Aマーブリング改良のための方法探求
  発育ステージ別の改良
 B豪州和牛と熱帯品種の可能性
  褐毛和種と熱帯品種の交雑
 C最高の結果を得るための系統探求
  肉色、脂肪交雑、地域特性
 D豪州和牛のブランド開発
 E豪州和牛のフィードロット生産
 F豪州和牛の海外での市場潜在能力

 各パネルの討議内容は、豪州和牛の繁殖、飼養管理など技術的なものが中心で、
豪州における和牛生産の技術確立が主目的であることが見て取れる。その中でも特
に脂肪交雑を主体として、肉質を少しでも日本の和牛に近づけるためにどうするの
かアカデミックな技術論が展開されていた。しかし、需用者の求める品質や価格な
どについての論議がなされなかった。

 AWAの理事の1人で自らも「ピュアブリード」と「フルブラッド」を飼養し、
精液・受精卵の販売および人工授精、受精卵移植を行っているハモンド氏(タスマ
ニア州)は、現状の問題として、生産される枝肉の品質に若干ばらつきがあること
を指摘し、肉質の安定した肉牛を生産できるよう、今後もさらに改良が必要である
と述べた。品質の斉一性を高めることに最大の目標を置いていることがうかがわれ
た。

 豪州和牛の生産者が日本市場に熱い視線を注いでいることは事実だが、飼養技術
面などで、課題が残されているといえる。

 これらの課題にどのように対応していくか、今後の対応に注目したい。


元のページに戻る