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フランスのBSE問題、EU各国に波紋
【ブラッセル駐在員 山田 理 11月15日発】EUがフランスを舞台とした牛海綿 状脳症(BSE)問題で、大きく揺れている。同国で10月下旬、BSE感染の疑い のある牛肉約1トンが大手スーパーで販売されていることが明らかとなり、店頭か ら回収された事件が発端となった。フランスではBSEの発生件数が今年に入って 急増しており、この事件をきっかけに、牛肉の安全性に対する不信感が消費者の間 に爆発的に広がった。 BSE感染の可能性を有するとして骨付き肉の販売禁止を政府が検討していると の報道もあり、レストランや小中学校の給食などで、骨付き牛肉をメニューから除 外する動きが広がっている。消費者の牛肉離れも顕著となっており、牛肉の販売は 通常時に比べ40%近くも減少したとの報告もある。 波紋は他の諸国にも広がり始めている。現在までBSEの発生が確認されていな いスペインは11月8日、フランスなどからの繁殖用成牛の輸入停止を表明した。E Uとの加盟交渉を進めているポーランドやハンガリーもフランス産牛肉の輸入停止 を決めた。 こうした中、フランスの生産者団体は11月7日、牛肉に対する信頼を回復するた めには、わずかでも感染の可能性を有する牛肉を食用から排除する必要があるとし て、96年7月15日以前に生まれた牛の出荷を停止する方針を明らかにした。BSE 感染源となる危険性が高い部位を含む肉骨粉の飼料利用がイギリスなどでのBSE 感染拡大の要因とされており、フランスでは同年月日に肉骨粉の製造基準が強化さ れている。出荷停止の対象となる頭数は、全飼養頭数の5〜7%に当たる約130〜1 50万頭に上るため、補償措置を政府およびEUに求めるとしている。 また、フランス政府は11月14日、肉骨粉の飼料使用禁止等のBSE対策強化を表 明し、EU委員会も、現行のBSE対策の有効性を強調した上で、一定月齢以上の すべての牛を対象としたBSE検査の実施を提案することを明らかにするなど沈静 化に向け躍起になっている。なお、牛肉の消費減少に対応するため、民間在庫補助 の発動も示唆している。これらの提案は、11月20〜21日の農相理事会および11月21 〜22日の常設獣医委員会(SVC)で協議される見込みである。 今年のフランスのBSE発生件数は、11月14日までに99頭報告されており、既に 昨年(30頭)の3倍を超えている。この内訳は、臨床症状を呈して発見されたもの が60頭、今年から導入されたサンプル検査による発見が39頭となっている。 BSEに関して、危険性が高い国と見なされる基準は、2歳齢以上の成牛100万 頭当たりのBSE発生数で100頭以上とされているが、フランスは7頭と依然低い 水準にある(イギリス:約500頭、ポルトガル:約200頭、アイルランド約40頭)。
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