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酪農改革に係る緊急調査の実施を命令(豪州)


【シドニー駐在員 野村 俊夫 11月16日発】豪州農林漁業省(AFFA)のトラ
ス大臣は11月12日、豪州農業資源経済開発局(ABARE)に対し、今年7月に開
始された酪農改革が生産者に及ぼした影響について緊急調査を実施し、30日以内に
報告書を提出するよう命じた。改革後の乳価が予想を大幅に上回って低下し、多数
の生産者が経営困難に陥っている事態を把握するための措置と思われる。

 今回、ABAREが緊急調査を命じられたのは、@酪農生産者、乳業メーカー、
小売業者の生乳取引価格(改革前後の比較)、A生産者が改革前に保有していた飲
用乳生産枠(クォータ)の評価額と、州政府によるその補償措置、B国内競争政策
(NCP)の遂行財源として連邦政府から州政府に支給された交付金の額とその使
途、C改革によって消費者が受けた恩恵、D改革によって各州の酪農乳業界が受け
た影響、E生産者の生乳生産コストと収益性に及ぼした改革の影響、の6項目とな
っている。

 トラス大臣は、この発表に際し、最大の問題は改革前に飲用乳クォータ制度を実
施していたニューサウスウェールズ(NSW)州やクィンズランド(QLD)州の
州政府が、生産者にクォータ喪失分の補償を行っていないことだと述べ、連邦政府
がNCP推進の財源として州政府に支給した交付金をこの施策に活用すべきだと指
摘した。

 豪州では、酪農改革実施後、飲用向け価格が大幅に下落し、飲用向け比率が高か
ったNSW州、QLD州、西オーストラリア州などで多数の生産者が経営困難に陥
っている。QLD州では改革直後から廃業者が続出しており、また、当初は大きな
動きがなかったNSW州でも、州内約1,700戸のうち既に200戸を超える廃業が報告
されている。

 NSW州酪農組合(DFA)は、このままでは組合員数の大幅な減少が避けられ
ず、組織の維持が不可能になるとして、今月初旬から州内各地で開催されている地
区大会で、組合員に対し、同州総合農業組合(FA)への組織統合を提案している。

 野党労働党や豪州酪農生産者連盟(ADFF)は、緊急調査の実施を当然としつ
つ、このような調査は改革を実施する前に実施しておくべきだったと連邦政府を厳
しく批判している。

 なお、ADFFは、緊急調査の実施をきっかけとして、生産者が生乳取引の団体
交渉権を獲得することを望んでいる。豪州では、商業法(Trade Practice Act)に
より販売側の団体交渉権が厳しく制限されているが、酪農改革により生産者が生乳
取引で極めて不利な立場に置かれたと判断されれば、例外として対メーカー団体交
渉権が認められる可能性があるためである。

 ただし、この例外適用の申請は、酪農生産者以外からも数多く出されているため、
連邦政府は、その適用承認に極めて慎重にならざるを得ないと思われる。

 来月中旬に提出される緊急調査報告書の内容と、その取り扱いをめぐる連邦政府、
州政府、酪農業界の動向が注目される。


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