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セランゴール州、養豚を全面禁止へ(マレーシア)


【シンガポール駐在員 宮本 敏行 11月16日発】マレーシアのセランゴール州政
府はこのほど、主要河川や貯水池の環境汚染の悪化を理由に、2005年を目途に州内
における養豚を全面的に禁止すると発表した。98〜99年に猛威を振るったウイルス
性脳炎の沈静後、各州政府は将来的な養豚産業の廃止をにらみ、指定地域以外での
養豚を禁止するなどの措置を講じてきた。今回、5年後という短い期限で全面禁止
を掲げた州が現れたことは、関係者の間に波紋を広げている。

 同州は首都クアラ・ルンプールを取り囲む人口集中地域であるとともに、豚の一
大生産地としても知られている。同州はウイルス性脳炎により養豚産業がほぼ壊滅
的な打撃を受けたネギリスンビラン州に隣接し、脳炎発生前と比較して3割以上の
豚を失った。マレーシア獣医畜産局が公表した99年7月末における同州の養豚農家
戸数は143戸(国内3位)、豚飼養頭数は25万頭(国内4位)と、国内でも有数の
規模を占めている。

 同州政府環境課の調査では、州内の主要7河川のうち、6河川の汚濁がかなり進
行しており、養豚を中心とする畜産業がその主因であるとされている。

 しかし、養豚関係者は、州政府が最も汚濁が激しいとした2河川沿いには、養豚
農家がほとんど存在しないことや、州政府が畜産業以外の要因による河川の汚濁状
況を調査していないことを挙げ、養豚農家が環境汚染の「スケープゴート」にされ
るいわれはないとして、政府の決定に強い反発を見せている。また、彼らは、養豚
業者は環境課と連携し、数年前から台湾やカナダでふん尿処理の技術を学ぶなど、
既に環境への配慮を行っていること、千頭規模以上の養豚場は、40万リンギ(約120
万円:1リンギ=30円)と経営を圧迫しかねない出費をして汚水処理システムを導
入するなどしていることを訴え、世論の同意を得るべく躍起となっている。

 養豚業者の反感をことさらにあおる主因としては、宗教上の観点から、マレーシ
ア政府が積極的な養豚政策を明確に打ち出していないことが挙げられる。ウイルス
性脳炎発生後もこの状況は変わっておらず、殺処分した豚の補償金の未払いをめぐ
る訴訟などのトラブルが頻繁に発生しており、セランゴール州における養豚業者の
反発も、環境汚染の責任を押し付けられているという思いが強く現れたものとみら
れている。また、マレーシア華人協会は、同州で養豚が禁止されたあとの養豚農家
の移転先が全く検討されておらず、仮に他州に候補地を設定しても、その場所の州
政府および中央政府から同意を得ることは極めて困難であろうとし、政府の対応ぶ
りを批判している。

 今回の一件は、先に中央政府が音頭を取り、各州に生産団地を建設して将来的な
発展への協力を惜しまないとする養鶏政策との対照性を改めて浮き彫りにしている。
セランゴール州の今回の発表により、既に養豚の廃止や限りない縮小を表明してい
るジョホール(2015年までに廃止の意向)、ネギリスンビラン、マラッカなどの各
州がこうした強硬策に追随するのは確実とみられ、養豚産業への風当たりは今後、
ますます厳しさを増していくものと思われる。


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