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スミスフィールド社、IBP社の買収に乗り出す(米国)
【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 11月16日発】豚肉部門における全米最大の生 産・処理・加工会社であるスミスフィールド社(本社:バージニア州)は11月13日、 食肉パッカーとしては世界最大の販売高を誇るIBP社(本社:サウスダコタ州) の買収に乗り出す意向を正式に表明した。同社は、既にこの10年間で、国内外の関 係企業を11社買収するなどにより、99年度の販売高で52億ドル(約5,720億円:1ド ル=110円)を計上するに至っている。仮に、今回の買収が実現した場合、IBP社の 約146億ドル(約1兆6千億円)と合わせると、販売高は、単純計算で約200億ドル (約2兆2千億円)に達することとなる(さらに、同社の試算では、年間約2億ドル (約220億円)の相乗効果も期待できるとしている)。 IBP社の買収に関しては、10月上旬に、投資銀行のドナルドソン・ラフキン& ジェンレット(DLJ)社(本社:ニューヨーク)が、IBP社の公開株式約1億 600万株を、1株22.25ドル(約2,450円)で買い取ることで合意したとの発表がな されたばかりであり、買収総額は、IBP社の負債額約14億ドル(約1,540億円) を含む約38億ドル(約4,180億円)とされていた。 一方、スミスフィールド社は、この8月までに、IBP社の株式の約6.6%を取得 するなど、かねてからその動きが注目されていたが、今回の発表により、IBP社 をめぐる状況に新たな展開が加わった。同社が提示している条件は、株式交換制度 により、IBP社の1株を、25ドル(約2,750円)相当のスミスフィールド株と交 換するというものであり、買収総額(負債を含む)は、約41億ドル(約4,510億円) と、株価の低迷に悩むIBP社にとっては、DLJ社との合意内容よりも有利なも のとなっている。 同社のルーター会長は、牛肉部門を取り込んだ一大ナショナル・ブランドを構築 することにより、最近IBP社が力を入れ始めているケース・レディー・ミート (精肉を小売店のショーケースに並べるだけという段階にまで、加工・包装を施し たもの)などの付加価値商品市場におけるシェアを拡大させることができるなどと して、今回の買収が、「双方の株主にとって多大な利益をもたらす絶好の機会であ る」と述べている。 これについて、IBP社側は同13日、スミスフィールド社との話し合いに応じる 用意がある旨返答するなど、比較的好意的な反応を示している。ただし、同社はそ の中で、@独占禁止法などに基づくパッカーの寡占化に対する規制上の問題を解決 することが極めて重要であると強調するとともに、Aスミスフィールド社の株価が 低下しても、IBP社の株主の利益が損なわれないよう、1株当たりの交換価格を さらに引き上げるよう要請している。 上記@に関し、スミスフィールド社は、一部の資産(既存施設)を売却するとと もに、牛肉部門については、同社の企業戦略でもある農場の所有(垂直的統合)は 行わないとの意向を表明している。しかし、大手パッカーによる寡占化の進展によ り、生産者の競争力が弱められるなどとして、議会筋や農業団体からは反発の声が 上がっており、中西部出身の議員らが司法省に対し、今回の買収の動きを阻止する よう要請したとの報道もある。また、グリックマン農務長官も、同省に対して調査 要請を行ったとも報じられている。 今後、両社が、このような問題をクリアーし、最終的な結論を得るまでには、し ばらく時間がかかるものと予想される。
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