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米国、関税割当に関する提案をWTOに提出
【ワシントン駐在員 樋口 英俊 11月 21日発】米国政府は11月17日、世界貿易機 関(WTO)に対して、関税割当(TRQ)に関する交渉提案を提出した。 この中で同政府は、移行措置的なTRQを段階的に廃止していくべきとの方向性 を示した上で、それに向けたステップとして、@輸入国が貿易を阻害する目的でT RQを管理することのないよう、輸入許可手続きの透明性の向上、TRQの実施な どに関する情報の適時的かつ効果的な提供、市場の需要を反映させるためのTRQ 対象品目の非制限化、未使用輸入許可の再配分といった原則に基づいて、追加的な 規律を定めること、A割当数量に対する輸入実績に応じて、1次税率(無税または 低率)を引き下げること、B税率の引き下げに当たっては、各国間の不均衡を是正 するとともに、すべてのWTO加盟国に市場アクセス機会を提供する形で割当数量 を徐々に拡大させていくという手法をとること、C割当数量に対して輸入実績が少 ない場合に、1次税率を引き下げるトリガーシステムを定めることなどを提案して いる。 米国政府は6月末に国内支持、市場アクセス、輸出競争の分野を含む包括的な農 業交渉提案をWTOに対して提出していたが、今回は市場アクセスの改善上重要視 されているTRQに焦点を絞って、提案されたものである。 10月に発表された米農務省(USDA)のTRQに関する報告記事によれば、99 年末時点で37ヵ国から1,300件を超えるTRQがWTOに通報されているという。 国別では、ノルウェー、ポーランドおよびアイスランドが上位3ヵ国で、全体の約 3分の1の件数(431件)を占めているが、一般的には工業先進国でより採用され ているとされ、EUで87件、米国でも54件が通報されている。 品目別では、野菜・果物が全体の約4分の1を占める354件で最も多く、これに 続いて、食肉(245件)、穀物(217件)、乳製品(181件)、油糧種子(124件)の 順となっている。 各国間の税率格差の例として、韓国の場合、平均で1次税率が21%、2次税率が 366%、カナダについては、それぞれ8%および203%、米国については、それぞれ 10%および29%などと報告されている。 また、個別産品の例として、一般的に税率が高いとされるバターについて、韓国 の場合、1次税率が40%、2次税率が99%、カナダについては、それぞれ12%およ び299%、米国については、それぞれ8%および96%などとなっている。 今回の提案に当たり、バシェフスキー通商代表は、米国生産者にとっての市場ア クセス機会を向上させることは、WTO交渉における米国の最優先課題であると述 べ、TRQの改善に尽力する姿勢を示した。一方で、TRQの恩恵を受けている品 目の生産者の間には、税率の引き下げや割当数量の拡大に否定的な者もいるようで、 こうした提案は、必ずしも米国農業関係者の総意とは言えない面もありそうだ。
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