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USDA、食肉などのリコール情報の共有で新提案



【ワシントン駐在員 樋口 英俊 9月28日発】米農務省(USDA)食品安全
検査局(FSIS)は先ごろ、食中毒などの防止を目的とした食肉製品などの自
主回収(リコール)について、関係する他の政府機関などとの情報共有を促進す
るため、新たな規則を提案した。

 FSISは、この提案について、リコールを実施する企業の情報(例えば、出荷
先リストなど)を食品衛生に係る他の連邦政府機関や州政府と共有することを可
能にするもので、各組織間の協力を円滑化し、結果として国民の健康を守ることに
寄与するものと説明している。

 現在の規則では、FSISが他の連邦政府機関などに提供できる情報は、一般国
民に開示されたものと同様のものでなくてはならないとされており、リコール実施
企業の情報の守秘と他の連邦政府機関などとのリコールへの協調的な対応とのは
ざまで、難しいかじ取りを迫られていた。今回の提案により、企業秘密に該当する
情報については、一般国民への情報開示の対象外としたうえで、他の連邦政府機関
などへ提供することが可能となる。なお、情報の提供に当たって、他の連邦政府機
関などには、書面で企業情報の守秘を約束することが義務付けられる。

 FSISは、今回の提案が情報公開に反するのではないかとの懸念に対して、一
般国民が入手できるリコール情報は従来通りのものであり、FSISの情報共有機
能を強化するものにすぎないと強調している。

 食肉製品などのリコールについては、製造業者または流通業者が、関係する連邦
政府や州政府機関と協力して、あくまで「自主的に」行うこととされている。FS
ISは、流通している食肉製品などに食中毒のリスクなどがあると判断される場合
には、当該製品を差し押さえるとともに、製造業者などに対して、リコールの実施
を要請することはできるが、リコールを強制する権限は有していない。

 企業がリコールを実施する時には、FSISのリコール管理課(RMD)が、リ
コール対象製品について、その健康に及ぼすリスクにより3段階からなる格付けを
行い、リコールの範囲(数量、製品の種類)などについて勧告を行うこととなってい
る。また、RMDは、連邦政府などの公衆衛生担当者へリコールの通知を行うほか、
FSIS議会・広報室が一般国民へのプレスリリースを行う際の支援も実施してい
る。

 今年に入ってFSISから報告されている食肉製品などのリコール件数は9月28
日時点で63件であり、主な内訳ではリステリア菌の汚染が30件、腸管出血性大腸菌
O157が16件、サルモネラ菌が3件となっている。この時点でリステリア菌の汚染に
よるリコール件数がほぼ昨年並みとなるなど、全体でも昨年の62件をすでに上回っ
ている。

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