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EU、米国産ホルモンフリー牛肉の全量検査を撤廃
【ブラッセル駐在員 山田 理 10月5日発】EU委員会は9月27日、常設獣 医委員会(SVC)での採択を受けて、米国から輸入される食肉を対象に実施して いたホルモン残留に関する全量検査の撤廃を決定した。 EUでは、天然型か合成型かを問わず、成長促進剤としてのホルモンの使用を禁 止しており、成長ホルモンを投与した肉牛から生産された牛肉の輸入も89年から禁 止されている。 しかし、99年4月、成長ホルモンを投与していないとして輸入された米国産牛肉 および肝臓についてサンプル検査を行ったところ、その12%に成長ホルモン(トレ ンボロン、ゼラノール、メレンゲステロール)の残留が認められた。このため、米 国側のチェック体制が問題となり、それ以降、全量検査が行われてきた。 EU委員会が、米国に対し再発防止のための十分な改善措置を講じるよう強く改 善を迫った結果、米国も第3者機関による認証システムを導入するなど、対EU輸 出向けホルモン非投与肉牛プログラムの改善に応じた。2000年3月には米国のホル モン非投与牛肉に関する輸出検査体制が、SVCによりEU基準に沿ったものであ ると認められた。 今回の決定により、EUに輸入される米国産の食肉は、他の域外諸国から輸入さ れるものと同様に、20%の抽出検査が実施されることとなる。なお、これまで実施 された米国産食肉に対する全量検査では、ホルモンの残留は認められていない。 ちなみに、EUのホルモン牛肉の輸入禁止措置に関しては、世界貿易機関(WT O)により、衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)に違反している との裁定が出されている。しかし、EUは健康を害する恐れがあるとして、その後 も輸入禁止を継続しており、これに対し、米国およびカナダは、それぞれ99年7月 29日および8月1日から、EU産食肉・食肉製品などに対し100%の報復関税を 適用するという制裁措置を発動した。 しかし、EUが制裁措置の発動後も、依然として輸入禁止措置を撤回する動きを 見せないため、米国は本年5月、報復対象品目の入れ替え方式の導入を準備するな ど、昨年以降、EU・米国間のホルモン牛肉をめぐる貿易紛争はエスカレートして いる。 今回の米国産食肉のホルモン残留に関する全量検査の撤廃により、米国産ホルモ ン非投与牛肉のEUへのアクセスが改善に向かうとみられる。EUでは、米国など が実施しているホルモン牛肉に対するEUへの制裁措置の緩和に向けて、交渉開始 の契機になるものと期待する向きもある。
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