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在来種による鶏の有機飼育を奨励(フィリピン)
【シンガポール駐在員 外山 高士 10月5日発】フィリピン農業省は、ザンバ レス州(ルソン島中西)における、在来種の鶏(ピナツボ鶏)を用いて約2千戸の 養鶏農家が行う有機飼育に対し、50万ペソ(約125万円:1ペソ=2.5円)の奨励金 を交付すると発表した。 飼養農家によるとこの鶏は、在来の品種を改良して作出した品種で、放し飼いに より容易に繁殖が可能であり、野菜くずや野草などをえさとして与えていることか ら、コレステロール含量が一般の鶏肉より少なく、風味に富んでいるとされている。 フィリピンにおける鶏肉の生産量は、経済成長を背景に増加する消費量に伴い、 増加傾向で推移していた。ところが、東南アジア地域を襲った通貨危機の影響で、 輸入飼料価格が高騰するなどの影響を受け、98年には減少に転じ、今年に入りよう やく前年を上回る水準に回復し始めた状況となっている。 しかし、鶏肉に対する需要は、生産量を大きく上回って推移していたため、生産 減により輸入鶏肉が大量に流入することとなった。特に、米国から安価な鶏肉が大 量に輸入されたため、大幅な価格の低下が見られている。 99年上半期の平均農家販売価格は、1s当たり56.25ペソ(約141円)であったが、 今年上半期には50.17ペソ(約125円)と約11%の下落となっている。この価格の下 落により、養鶏産業に従事する約3万人の雇用が危ぶまれていたことから、今回の 措置は、これらの安価な輸入鶏肉の流通増加に対抗し、国内養鶏産業を振興する手 段として実施されたものと見られている。 また、インドネシアやタイなどでブロイラー飼養羽数が在来種の飼養羽数を大き く上回っているのに対し、フィリピンにおける在来種の飼養羽数は、98年はブロイ ラーの4千6百万羽に対して7千9百万羽と、逆にブロイラーの羽数を大きく上回 っている。農業省では、これらの在来種を活用して国内全域での養鶏の普及を図り、 在来種の品種改良や飼育方法の指導なども実施することとしている。 さらに、同省はこの計画に、養鶏農家のほか鶏肉加工業者や輸出業者も加えた振 興体制づくりを考慮している。これについては、飼養羽数や鶏肉処理施設の整備が 十分でないなどのため、現時点での実施は困難な状況であるものの、将来的には有 機鶏肉として輸出することを目標としている。そして、その有力な輸出先として日 本を挙げている。 農業省では、他の多くの州においても、ピナツボ鶏の有機飼育を視察し、早速導 入を決めるなど、鶏の有機飼育に対する関心は高まっているとしており、在来種を 用いた有機飼育の今後の発展に期待している。
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