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生体牛輸入の伸びが再び顕著に(インドネシア)
【シンガポール駐在員 宮本 敏行 10月10日発】インドネシアが豪州から 輸入する生体牛頭数の伸びが、再び顕著になっている。 インドネシアは従来から、国内の牛肉需要に対応するため、豪州から肥育素牛 を導入してきた。輸入頭数は、90年には3千6百頭にすぎなかったものの、94年 には10万頭を突破し、経済危機に見舞われる直前の96年には、史上最高の37万9 千頭を記録した。しかし、急成長を遂げたフィードロット産業も、97年後半に発 生したみぞうの経済危機で甚大な痛手を被り、輸入頭数も98年には3万9千頭に まで激減した。この間に、多くのフィードロット企業が、倒産や事業縮小を強い られたと伝えられる。 しかし、経済の回復が徐々に進むとともに、通貨ルピアの下落が一段落したこ とも好材料となり、99年には再び10万頭を突破して13万3千頭を記録している。 今年に入るとその傾向はさらに顕著となり、1〜9月の輸入頭数(速報値)は14 万頭に達し、すでに昨年の年間頭数を上回っている。 インドネシア肉牛生産者協会によると、各フィードロット企業は次第に鮮明さ を増す経済回復の追い風を受け、特に今年に入って活動を活発化させているとい う。また、現在、豪州からの生体牛輸入価格は生体重1kg当たり1.05ドル(約114 円:1ドル=約109円)となっており、国内市場での販売価格が同9千8百ルピア (約137円:100ルピア=約1.4円)であることから、肥育コストを勘案しても利益 が見込めるとしている。さらに同協会は、政府が国内の牛の飼養頭数を維持する 目的で国産牛のと畜を最大150万頭に抑ええる政策をとっていることから、現在の 国民1人当たりの年間牛肉消費量1.7kgを満たすためには、1年に60万頭の生体牛 を輸入する必要があると試算している。これまで苦しい経営を強いられてきたフ ィードロット業界にとっては、事業再拡大の好機が訪れつつあると言えそうであ る。 一方、ぎくしゃくしがちだったインドネシアと豪州の関係も、次第に好転しつ つある。両国の関係は、先の東ティモール独立問題をめぐり、これまでになく冷 え切ったものとなっていた。しかし、時間の経過とともに両国のわだかまりも解 消し、国民感情の面においても、この問題は次第に落ち着きを取り戻しつつある と言われる。このことが、最近のインドネシアへの、生体牛をはじめとする豪州 産農産物の輸出を促進している一因ではないかと指摘する向きも多い。 なお、インドネシア牛肉輸入協会は、豪州やニュージーランドの牛肉需給がタ イトなため、国内の年末需要を満たすためには、アイルランドから約8千トンの 牛肉を輸入する必要があると述べている。インドネシアでは、年末に大きなイス ラム教の祭事を控えており、牛肉の需要は相当量に上るものと予測される。 インドネシア肉牛生産者協会は、最近、豪州の生体牛はメキシコやエジプトに 仕向けられる傾向があるとしながらも、今年のインドネシアの生体牛輸入頭数は、 経済危機以前の95年の水準に迫る20万頭に達すると予測している。
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