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養鶏団地の建設計画が進行(マレーシア)
【シンガポール駐在員 宮本 敏行 10月19日発】マレーシア政府は、2006年を目 途とし、各州に鶏肉生産のための養鶏団地を新たに建設する計画である。9月初旬 に開催された、マレーシア獣医協会主催の畜産セミナーで明らかにされた。 農業省獣医局によると、各州は養鶏団地を建設するための用地を、来年までに選 定することとされている。同局は、養鶏農家が地域住民とのあつれきを生じない特 定の地域に定住して養鶏に励むことで、長期的な鶏肉需要に対応する体制が確保さ れるとともに、環境への影響も最小限に抑えることができるとしている。既に西マ レーシアのパハン州がこの計画に同意しており、政府は早急に他州の賛同も取り付 けたい考えだ。 既存の養鶏農家が慣れ親しんだ土地を離れ、新たな土地に移動することについて は、異論を唱える向きも多いのではないかとの質問に、政府は、当面は既存の場所 で養鶏を継続することができないと判断した農家から順次移動すればよいとし、団 地建設後、直ちに全農家が移動する必要性を否定している。政府は、現在、適地で 養鶏業を営んでいる農家も多数存在することを認識しているとしながら、団地化が 養鶏産業の30年後を見据えた最善の措置であることを説いて、農家の理解を求めて いる。また、養鶏農家の移転に当たっては、最大限の補助を惜しまないともしてい る。 政府は、今回の試みが成功すれば、鶏卵や肉牛の分野でも同様の生産団地建設を 進める計画とも伝えられる。しかし、畜産業の一極集中は、環境面への配慮など多 くの解決すべき問題が発生するものと考えられ、計画の進行とともに地域住民から 大きな反発が噴き出すことも予想される。 一部では、この計画に異論を唱える声が早くも出されている。マレーシア華人協 会は、同規模の養鶏農家が集合することは競争激化の原因となり、個々の農家の体 力低下が危惧されるとし、この措置は同国の畜産業を後退させかねないとして警鐘 を鳴らしている。また、養鶏分野における環境問題は、養豚分野より軽微であり、 養鶏団地を建設する以前に、養豚分野における諸問題の解決に配慮することこそ先 決であるともしている。 同協会の提言には、ウイルス性脳炎発生後、大きな痛手を受けた養豚産業に対す る政策支援が不十分であるなど、養鶏業を重視する一方で養豚業をなおざりにする 傾向が強いとされる政府への、やり場のない不満が込められているという見方も強 い。 なお、マレーシアにおける最近の鶏肉の生産動向をみると、出荷羽数は8月上旬 以降7百万羽を上回って推移しており、9月中旬以降は過去3年間の水準を上回っ ている。業界では、年末までは7百万羽を上回る好調な生産が続くと予測しており、 鶏肉価格は軟化傾向にある。 マレーシアをはじめとするアセアン諸国は、2003年に発足するアセアン自由貿易 圏(AFTA)への準備を急いでいる。これにより、畜産物の自由化も大きく進展 することとなるが、マレーシアの一部では、養鶏業の団地化というコスト増を招き かねない畜産政策の変更により、開かれた市場の中で同国産鶏肉が競争力を失う可 能性を指摘する声も上がっており、団地化への慎重論が今後高まることも考えられ る。
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