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アルゼンチン、ブラジル産鶏肉にダンピング制裁措置



【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 8月30日発】アルゼンチン経済省は、
7月24日付け官報で、アルゼンチン向けブラジル産鶏肉丸どりの最低輸出価格
(FOBベース。以下同じ)を設定し、輸出価格が最低輸出価格を下回る場合、そ
の差額相当分をアンチダンピング税として賦課する旨の決議(7月21日付け決議
574/2000)を発表した。

 同決議によると、サジア社に対して0.92ドル(約98円:1ドル=107円)/s、
アビパル社を含むその他の輸出業者に対して0.98ドル(約105円)/sの最低輸出
価格が設定され、ダンピング行為が認められないと判定されたセアラ社とニコリニ
社からの輸入については、アンチダンピング税の対象から除外された。なお、同決
議は、官報で発表された翌日から3年間有効となる。

 今回の決定は、97年、ブラジルからアルゼンチンへの鶏肉輸出が急増したことを
背景に、アルゼンチン鶏肉産業の利害を代表するアルゼンチン養鶏加工協会(CE
PA)が、ブラジル産鶏肉丸どりにダンピングの疑いがあるとして、調査を要請し
たことに端を発するものである。99年1月にダンピング調査開始の決定がなされ、
同年12月にアルゼンチン経済省の国家貿易委員会は、ブラジル産鶏肉丸どりのダン
ピング輸入によりアルゼンチン鶏肉産業に損害が生じているとの結論を下した。 
                                                        
 両国間の鶏肉貿易については、ブラジル鶏肉輸出業者協会(ABEF)とCEP
Aの間で、ブラジル産鶏肉輸出枠などを取り決めた紳士協定が結ばれたが、ブラジ
ルが輸出枠を上回る数量を低価格で輸出したことから、99年10月、同協定は破棄さ
れた。

 同年11月には、ブラジルとの国境に位置するエントレリオス州の鶏肉生産者団体
からの訴えを受けた同州の連邦裁判所が、ブラジル産鶏肉輸出枠を月間3,742トン
とする旨の判決を下した。これに対し、アルゼンチン経済省は、国内の判決は国家
間の貿易問題に対し無効とする決定を下している。

 また、今年2月、アルゼンチン政府は、ブラジル産鶏肉に対し、国単位の無菌証
明に加えて、ロット単位の無菌証明の提出を義務付ける旨の衛生規制措置を講じた。

 アルゼンチン政府が決定した今回のダンピング制裁措置について、ブラジル政府
は、事前調査の不備を指摘した上で、アルゼンチンが同措置の見直しを行わない場
合、世界貿易機関(WTO)に提訴する用意があるとの見解を明らかにした。

 8月中旬、リオデジャネイロ市で南米南部共同市場(メルコスル)会議が開催さ
れたが、鶏肉ダンピング問題について、両国間に意見の一致は見られなかった。し
かし、アルゼンチン政府は、同問題について両国の業界団体が相互に合意した調整
案があれば、今回の措置を見直す構えを見せていることから、ABEFとCEPA
による協議の展開が注目されるが、今のところ、前向きな調整案は示されていない。


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