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EU、脱脂粉乳に対する輸出補助金を3割削減



【ブラッセル駐在員 山田 理 8月31日発】EU乳製品管理委員会は8月24
日、脱脂粉乳に対する輸出補助金の単価を翌25日から18.4%引き下げ、100kg当
たり40ユーロ(約3千9百円:1ユーロ=97円)にすることを決定した。8月に入
って3週連続の引き下げとなり、月間での削減率は31.6%に及ぶ大幅なものとなっ
た。この結果、引き下げ後の単価は、ピークであった99年9月の2分の1以下に低
下している。
http://lin.alic.go.jp/alic/week/2000/sep/wpeC32.jpg (8601 バイト)

 輸出補助金の単価引き下げの背景として、@脱脂粉乳国際価格の高騰に加え、A
為替相場が引き続きユーロ安基調で推移していることが挙げられる。国際的な指標
価格の1つである西欧積み出し港価格を見ると、99年8月以降上昇傾向で推移して
おり、今年8月には、2千ドルの大台を突破し、1トン当たり2,050〜2,200ドル
(約22万〜23万5千円:1ドル=107円)の記録的な水準で取引が行われている。
中東諸国や一時の経済的混乱から脱した東南アジア、メキシコなどが輸入を増加さ
せている一方、脱脂粉乳の主要輸出国である豪州、ニュージーランドが冬を迎え、
生産減少期に入っていることなどが国際価格の上昇に大きく影響したとみられる。

 また、今回の急激な輸出補助金の引き下げについては、EU域内での脱脂粉乳の
需給動向も勘案したものとみられる。

 EUの脱脂粉乳生産量(2000年1〜5月)は、前年同期に比べてかなりの程度
(▲8.4%)減少している。春から初夏にかけての高温などの影響で南欧諸国等の
生乳生産が減少し、EU全体の生乳生産も低迷する中で、域内消費の伸びが顕著で
利益率の高いチーズ生産に原料乳が集まったことが要因となっている。

 一方、消費面では、加工食品向けや飼料向け需要が依然堅調であることに加え、
域外向けの輸出も増加した結果、EUの脱脂粉乳需給はさらに引き締まってきてい
る。今年の初めに18万トンあった脱脂粉乳の介入在庫も、飼料向けを中心に順次放
出された結果、7月末には2万トンを切る水準まで減少し、介入在庫が解消するの
も時間の問題とみられている。

 こうした状況の中で、脱脂粉乳の域内価格は上昇を続けている。指標価格の1つ
であるドイツの工場渡し価格を見ると、今年7月には前年同月比32.0%高の5.11マ
ルク(約250円:1マルク=49円)/kgと過去最高を記録した。最近、飼料向けの
脱脂粉乳価格がやや低下するなど、頭打ちの兆しも出てきているが、脱脂粉乳生産
に関して増加に転じる要素は見当たらないことから、堅調な価格動向は今後も維持
されるものとみられている。


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