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採卵鶏ケージ飼養の禁止案を否決(豪州)



【シドニー駐在員 野村 俊夫 8月31日発】豪州およびニュージーランド(N
Z)の関係閣僚で構成する、農業資源管理評議会(ARMCANZ)は8月18日、
ブリスベーンで動物愛護の観点から採卵鶏のケージ飼養を禁止するという提案につ
いて討議を行った結果、ケージ規格の改訂や新規格ケージの導入義務化などを条件
に、今後もケージ飼養を認めることを決定した。

 鶏卵生産者をはじめとする業界関係者はこの決定に一様に安堵しているが、王立
動物愛護協会(RSPCA)を中心とする動物愛護団体は強く反発している。

 豪州では、年間約2億個の鶏卵が生産されているが、そのうち約90%はケージ飼
養方式によるものであり、残りの約10%がいわゆる「平飼い」によるものである。
鶏卵生産は、総生産額が年間約1億2千5百万豪ドル(約76億円:1豪ドル=61円)
に達し、約3千人の直接雇用と約6千人の関連雇用を創出する重要な産業部門とな
っている。

 一方、採卵鶏のケージ飼養については、従来から動物愛護団体の反対意見が強く、
本年3月のARMCANZ会議で全面禁止案を含めた検討ペーパーが公表され、先
月末までの一般意見聴取を経て、今回の会議で最終決定が行われた。

 その結果、今後もケージ飼養を認める条件として、@ケージの寸法を1羽当たり
最低450平方センチメートルから550平方センチメートルに拡大すること、A2001年
1月以降に導入するケージはすべて新規格のものとすること、B2008年までにすべ
ての旧規格ケージを新規格のものに交換することなどが決定された。

 今回の会議では、採卵鶏のケージ飼養を禁止した場合、新規設備投資などに業界
全体で2〜4億豪ドル(122〜244億円)の支出が求められるほか、鶏卵価格が大幅
に上昇し、国際競争力を喪失するとの否定的な意見が大勢を占めた。また、ケージ
飼養でも、飼養管理基準を改善することによって動物愛護上の問題は解決できると
の意見も出され、結局、禁止提案は否決された。

 この決定に対し、RSPCAなどの動物愛護団体は、豪州が採卵鶏用ケージの大
半をEUから輸入していること、EUが来年からケージ規格を改訂するため必然的
に新規格になることを指摘し、今回の決定はこの既成事実を追認しただけで何の意
味も持たないと批判した。

 また、2008年までに旧規格のケージの廃棄を義務化したことについても、現在使
用されているケージが95年に導入された規格によるものであること、ケージの耐用
年数が約15年であることから、ARMCANZが鶏卵業界にコスト負担をかけない
範囲で妥協したにすぎないとしている。

 米国では、先般、大手ハンバーガーチェーンが養鶏部門の動物愛護に配慮する方
針を打ち出して注目を浴びたが、豪州においても動物愛護をめぐる諸問題が多くの
国民の関心を集めつつある。


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