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アルゼンチン、牛皮関連品輸出税をめぐり見直し議論



【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 9月20日発】アルゼンチンでは、牛皮
関連品(製革の原料となる生皮および原皮)に課せられる5%の輸出税の廃止、存
続をめぐって、政府、皮革産業界、肉牛生産者や食肉処理加工業者で議論が続いて
いる。

 同国の輸出税とは、実際の取引価格ではなく国の指標を基に算出した標準FOB
価格に対して課される、輸出業者などが収める税金のことである。同国では1800年
代後半から重要な税収源として主に穀物と牛肉に課せられたのが始まりである。

 1970年代、とりわけオイルショック後は、一次産品の国際市況も好況で同国の税
収の多くが輸出税で賄われる時期が続いた。しかし、80年代から貿易自由化の議論
が活発になる中で輸出税に対する国内外の批判が高まり、90年代の初めには当時の
メネム大統領の側近カバーロ経済大臣が提唱した新経済自由主義政策の下、ほとん
どの輸出税が廃止された。

 現在残っている輸出税は、牛皮関連品に5%、油糧種子(大豆)に3.5%の2つだ
けとなっている。この2つの輸出税の今日的意義は、往時のような税収確保にはな
く、原材料の輸出に障壁を設け、国内の皮革産業と搾油産業がコンスタントに、か
つ、安く原材料を調達できるようこれらの産業を保護することと、加工製品に高い
関税をかける先進国への対抗措置として、国内で付加価値の高い製品を作る方向に
政策誘導するためなどにある。

 当初、牛皮関連品は輸出税が15%、シカゴの皮革市況やフレートを基準に課せら
れる追加税が15%と、標準FOB価格の実に30%が税金として課せられた。その後
追加税は漸次削減され、現在は存在しないが、輸出税は温存された。

 肉牛生産者や食肉処理加工業者は、輸出税のほかに、同国では事実上生皮や原皮
の輸出が不可能なシステムになっていることなどを取り上げ、皮革産業保護のため
に原材料を安く買いたたかれていることに反対している。最近の試算では、輸出税
のおかげで皮革産業は年間約1億2千万ドル(約128億円:1ドル=107円)の利得
があるといわれている(と畜頭数約1,200万頭/年×生皮30s/頭×@0.33ドル(生
皮のシカゴ相場を基にした輸出予測価格と国内価格の差額))。

 政府は2000年1月1日から牛皮関連品の輸出税を廃止する方針を打ち出したが、
皮革産業界の反対もあり実施が6月30日に持ち越され、この時点でも決着がつかず、
結局、輸出税廃止は棚上げになっている。

 今年8月に開催された第114回国際農牧工業展で、ベロンガライ農牧水産食糧庁長
官は1百万頭分の原皮の輸出を容認する演説を行った。輸出税廃止を強く訴えるア
ルゼンチン農牧協会のクロット会長の手前、リップサービスともみられている。


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