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EU、豚に関する動物愛護規則の強化を検討
【ブラッセル駐在員 山田 理 9月21日発】EU委員会のバーン委員(公衆衛 生/消費者保護担当)は9月19日、豚に関する動物愛護をさらに推し進めるため、 現行規則を改正する意向を明らかにした。 豚の飼養に際しての保護を目的とした規則は、91年11月に理事会指令(91/630/ EEC)として定められている。豚の過密飼育や断尾等が日常化している実態を受けて、 EU議会がEU委員会などに対し、豚の飼養実態の改善措置を要請したことが制定 のきっかけとなった。 この指令は、EU内で飼養されるすべての豚(一部小規模農家を除く)を対象と し、生産者が豚を飼養する際に無用なストレスや苦痛を与えないよう保護すること を目的として、畜舎や豚の飼養管理について基準を定めている。現行指令の概要は、 以下の通りとなっている。 @ 体重別に豚1頭当たりの最低床面積を規定し、飼育密度を制限 (例)85kg超〜100kg以下 0.65u 100kg超 1.00u A 繁殖雌豚のつなぎ飼い用施設の新規および設備更新による設置を禁止 B 4週齢以上の子豚についての去勢は、獣医師または資格を有する者が麻酔をか けた上で実施 C 慣習的な尾および歯の切除を禁止、ただし、歯の切除が必要と見られる場合に は、7日齢以内に実施 D 最低3週齢まで、ほ乳期間を確保等 動物愛護団体などは、同指令の内容が十分なものではないとして、EU委員会や EU議会に対し、規則強化についての働きかけを続けていた。 また、EUの家畜衛生および動物愛護に関する科学委員会は97年9月、動物愛護 の面から、豚の飼育環境のより一層の改善が必要であるとの勧告を採択している。 こうした状況を受けて、今後さらなる飼養密度の緩和や、繁殖雌豚の群飼育など のほか、加盟国での実状などを踏まえ、正式提案に向けて検討が進められていくも のとみられる。 EUでは、消費者の動物愛護に対する高い関心を背景に、豚のみならず他の畜種 も含め、動物愛護の観点から生産段階の農場での飼養管理から輸送やと畜方法にま で幅広く規制が行われ、徐々にその内容が強化されている。ただし、域外諸国と比 較して突出した動物愛護の推進は、EU産畜産物の国際競争力を弱める側面を持つ。 このため、EUは世界貿易機関(WTO)交渉などの場で動物愛護の問題を取り上 げたいとの意向を持っている。しかし現実的には、EUに賛同できる国内環境を持 つ国は多くないとの見方もあることから、今後も、今のペースでの動物愛護の推進 が維持できるかが注目される。
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