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乳業企業、乳製品の値上げ申請へ(タイ)



【シンガポール駐在員 宮本 敏行 9月21日発】CP明治やフォアモースト、
ネスレなど、タイの大手乳業企業9社で組織するタイ乳業協会は近々、商業省に対
して牛乳・乳製品の1割以上の値上げ認可を申請する。同協会によると、最近の原
油価格の高騰や、引き続き通貨バーツが安値で推移していることによる生産資材の
輸入価格の上昇などで、生産・流通コストが上昇傾向にあるためとしている。

 タイ乳業協会は99年、牛乳の過剰供給問題の解決や、輸入脱脂粉乳の割当配分の
調整などを目的に設立された。同協会は来月、上記の要因によるコスト上昇分を算
定し、商業省に値上げ案を提示する予定だが、先月との比較では既に1割ものコス
ト上昇が見られるとしている。

 従来、多くの乳業企業は、UHT牛乳(日本のLL牛乳に相当)を製造する際に
安価な輸入粉乳類を使用するケースも多く、このことがタイで余乳が生じる大きな
原因の1つとなっていた。しかし、最近では、粉乳類の輸入価格の高騰からこれら
に見切りをつけ、原料を再び国産生乳に求める乳業企業も多く見られるという。ま
た、乳業企業は、豆乳などのより安価な飲料を求める消費者の牛乳離れにも頭を痛
めていると言われる。さらに、今年上半期のタイの乳製品市場規模(粉乳および濃
縮乳を除く)は200億バーツ(約520億円:1バーツ=2.6円)であったが、経済危機
以前と比較すると3分の2程度の規模に落ち込んでいるとされ、存亡の危機にさら
されている企業も少なくない。

 ほとんどの乳業企業が牛乳1パックの小売価格を7.25〜8.25バーツ(約18.9〜21.5
円)に設定していた中、商業省は先般、その上限価格を8.5バーツ(約22.1円)とし
た。このため、ラクトソイ社によると、乳業企業は牛乳1パックにつき、さらに0.25
バーツ(約0.7円)の値上げを行うことが必要とされている。また、同社では、最近
3ヵ月間で、牛乳1リットル当たりの生産コストが10.5バーツ(約27.3円)から12.5
バーツ(約32.5円)に、輸送コストは昨年の同じ時期と比較して3千万バーツ(約
7千8百万円)上昇したという。

 また、タイ・デイリー・インダストリー社によると、年初に全脂粉乳の輸入関税
が従来の5%から18%に引き上げられた上、輸入全脂粉乳の価格は1トン当たり6
万6千5百バーツ(約17万3千円)から8万3千バーツ(約21万6千円に上昇して
いることから、今年末には、現在、1箱当たり17バーツ(約44.2円)のれん乳の値
上げを検討しているという。同社はれん乳市場の5〜6割のシェアを持っており、
今年は50億バーツ(約130億円)の収入を見込んでいる。しかし、政府の調査によれ
ば、ほとんどの企業がシェア保持のために小売価格の値上げを見送っているのが現
状とされる。

 8月上旬、商業省は、コスト上昇の現状を踏まえた上で、粉乳類や肥料、飼料な
どの値上げを承認した。タイ乳業協会は、消費者の商品選択の動向に配慮しつつも、
企業存続のためには牛乳などの値上げも不可避としている。


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