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畜産物の自主表示に関する新たな動き(米国)
【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 9月21日発】食品の表示は、消費者の適切 な商品選択に資するための情報提供という役割のほか、他の商品との差別化を図る ための販売戦略上の手段として用いられるケースもある。これらを明確に区分する には困難な面があるものの、表示の方法いかんによっては、消費者の購買行動、さ らには生産・供給サイドの対応にも影響が及ぶこととなる。 こうした食品の表示が米国の関係者の間でも重要視されていることを示す事例と して、最近における畜産物の表示に関する新たな2つの動きについて紹介する。 1つ目は、国産牛肉に対する自主表示の制度化を求める関係団体の動きである。 全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)やアメリカ食肉協会(AMI)などの生産・加工 ・流通の関係4団体は先ごろ、小売業者等の自主参加を前提とした、米国産牛肉を 「牛肉:メイドインUSA」と表示することを可能にする認証プログラムの創設を求め た請願書を米農務省(USDA)に対して提出した。 これは、かつて食肉加工業界等の反発により原産国表示の義務化を断念せざるを 得なかったNCBAが、自主表示という手法に切り替え、これら業界の賛成を取り付け て行ったものであるとみられる。 請願書によると、対象となる牛肉は、米国内で最低100日間育成・肥育された後、 他国を経由することなく国内でと畜された肉牛由来のものに限定され、また、この プログラムに参加する生産者、パッカー、小売店等における個体識別や記録などに 基づく書面による認証システムが、USDAによって運営されることなどが挙げられて いる。 この請願に先立ち、USDAは、輸入された牛・羊枝肉に対する格付けの実施を全面 的に廃止する意向を正式に表明しており、近い将来、店頭からは、「USDA・チョイ ス」といった表示がなされた輸入枝肉由来の牛肉が姿を消すことになる。今回のNC BAの動きからは、枝肉だけでなく、近隣諸国からの生体の輸入に対しても目張りを することにより、消費者に対する米国産牛肉の威信を高めようとする並々ならぬ意 気込みがうかがわれ、今後のUSDAの反応が注目される。 もう1つは、最近、米国動物愛護協会(AHA:American Humane Association)に よる畜産物に対する動物愛護ブランドの表示制度が創設されたというものである。 具体的には、USDAの協力の下、AHAが設立した非営利組織が、苦痛を与えない方法 で飼養された家畜由来の畜産物に対して、「Free Farmed(自由に飼われたもの)」 という表示が行われることを認証するという任意制度である。 動物愛護に対する関心は、米国でも根強いものがあるが、家畜については、EUな どと比べると、まだ顕著な取り組みがなされているとは言い難い。しかし、年内の 制定が予定されているUSDAのオーガニック食品に関する基準案では、家畜の屋外へ のアクセスの確保が規定されており、また、先月には、大手ハンバーガー・チェー ンのマクドナルド社が、生産者に対して、ケージ面積の拡大といった採卵鶏の飼養 環境の改善を求めている旨を明らかにしたのも記憶に新しい。 こうした流れもある中で、今回の動物愛護ブランドの表示制度が、生産者や加工 業者などにおける取り組みをどこまで定着・拡大させるのか興味深いところである が、最終的には、このような新しい商品に対して、消費者が高いプレミアムを払う だけの価値を見いだせるか否かにもよるものと思われる。
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