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【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 4月5日発】EUでは今年1月から、牛海綿状 脳症(BSE)対策の一環として消費者の不安を解消するため、反すう動物以外の 家畜に対しても、肉骨粉など動物性飼料(PAP: Processed Animal Protein)の 給与が全面禁止された。EU委員会は3月19日、この結果見込まれる植物性たんぱ く飼料の代替需要増加への対応の必要性についての見解を明らかにした。この中で、 大豆かすなど植物性たんぱく飼料の世界的供給量は十分で、需要増は容易に輸入・ 調達できるとする一方で、EU域内で油糧種子などの増産を進めることについては、 多くの費用がかかるなどさまざまな問題があると指摘した。概要は次の通りである。 PAPを植物性たんぱく飼料に置き換えることについて、大きな問題はない。当 面の主な代替飼料は、穀物と大豆かすであろう。PAPの飼料利用禁止措置が、E Uまたは世界におけるたんぱくの不足を引き起こすことにはならないだろう。すな わち、不足分は、域内産穀物および輸入大豆かすならびに飼料の効率的利用によっ て賄うことが可能と見込まれる。特に、代替飼料として最適な大豆かすの需要増加 量は、100〜150万トンで現在の輸入量の約5%相当にすぎないものと見込まれ、容 易に輸入できるものと考えられる。 もし遠い将来、別の理由(世界的な需要増や供給減)で不足する事態になれば、 価格が上がり、それがインセンティブになり、EU内外において増産を刺激するも のと思われる。しかしながら短期的に見れば、油かすは広く入手可能であり、価格 は上昇するよりむしろ低下すると見込まれる。従って、PAPの禁止措置によって、 EU域内で植物性たんぱく増産のための新たな補助またはより多くの補助を行わな ければならない状況にはない。 短・中期的(今後2〜5年間)にEU域内で植物性たんぱくを増産するという以 下の選択肢はいずれも問題があるため、現実的でない。 1)油糧種子の増産(特定油糧種子作物の補助政策を維持し、油糧種子生産地域を 拡大するのに魅力的な水準に補助金を固定する) ・輸入大豆かすに比べ、かなり費用高である。 ・油糧種子作付面積は(米国との)ブレアハウス合意で制限されている。 ・より市場指向のための補助金引き下げというアジェンダ2000改革の重要要素を事 実上反故にするものである。 ・既に生産を行っている油糧種子生産者に対しても、アジェンダ2000改革以上の経 済的補助を与えることになる。 2)たんぱく作物(エンドウ、インゲン、ルピナスなど)の増産(特定作物に対す る補助金の増額) ・費用対効果の点で効率的でない。 ・既に生産を行っている作物生産者に対しても、さらに経済的補助を与えることに なる。 ・たんぱく作物の増産は、特別な環境的配慮をしないと、農地への硝酸塩の浸出増 加、ひいては水質汚染を引き起こす。 3)たんぱく高含有作物生産へのセット・アサイド(休耕地など)の利用承認 ・セット・アサイドは穀物生産の需要への調整機能を有しており、その利用は機能 低下を招く。 ・セット・アサイドは耕種作物の生産制限という重要な役割を持っており、作物生 産への活用は、世界貿易機関(WTO)の青の政策(ブルーボックス)要件の放 棄につながる。 4)乾燥飼料(dried fodder)の増産 ・乾燥飼料は主に牛用で、(今回新たに必要な)豚・鶏用飼料に適さない。 ・乾燥には通常燃料が必要であるなど、環境にやさしくないという議論がある。
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