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【シンガポール駐在員 小林 誠 4月5日発】シンガポールの大手スーパーチェ ーンによると、2001年1〜2月の鶏肉販売量は、前年同期を20%以上上回る大幅増 となった。このような増加の要因について、販売店では、連日報道されている家畜 衛生問題による消費者の牛肉離れに加え、英国産養殖サケに発がん性物質を含む飼 料が給与されていたことが判明したことが、消費者の安全志向に拍車をかけたもの とみている。 同国の大手スーパーチェーンとしては、民間資本のコールド・ストーレジ(売上 高4億5千万シンガポールドル=約316億円:1シンガポールドル=70.2円)が30 店舗、組合員40万人を擁するNTUCフェアプライス協同組合(売上高非公表)が 約80店舗あり、一般家庭向け食料品の販売では大きな勢力となっている。両チェー ンが3月末に発表したところによれば、2000年の鶏肉の販売量は、前年比10%の増 加であり、今年に入ってからは、前年を大幅に上回るペースで推移している。 同国は、国土面積が約648平方キロと東京都区部とほぼ同じ大きさしかないが、 人口は約415万人(2000年推計値)あって都市化が進んでいる。土地が狭あいなた め、汚水や廃棄物の処理に問題があり、畜産物は鶏卵の自給率が約35%であるのを 例外として、ほぼ100%を輸入に頼っている。このため、消費者保護の観点から、 他国の家畜衛生事情には過敏な反応を示し、欧州の牛海綿状脳症(BSE)との関 連では、周辺諸国に先駆けて、いち早く輸入禁止措置を講じている。また、本来、 国内にほとんど畜産業がないところには大きな影響がないと思われる口蹄疫につい ても、発生国からの輸入禁止措置を講じている。 同国では、従来から鶏肉が好まれており、チキンスープで炊き込んだご飯に蒸し 鶏をのせた「チキンライス」が代表的なシンガポール食とまで言われている。国土 開発省の傘下にある食料・獣医庁(AVA)によれば、鶏肉の輸入は、最近10年間 堅調に伸びている。昨年の輸入量は、マレーシア産のみが許可されている生体鶏が 約4,530万羽、1億1,320万シンガポールドル(約79億5千万円)相当となっている。 また、冷凍鶏肉については、豪州、米国、中国、タイから約8万2,850トンが輸入さ れており、約1億5,790万シンガポールドル(約110億8千万円)相当となっている。 最近、香港で、中国南部由来の赤色野鶏(鶏の原生種)を遺伝子工学で改良した 「スーパーチキン」が作出された。この鶏は、従来のブロイラーよりも脂肪が少な く、肉量が多くて、肉質が優れているということで、鶏肉好きのシンガポールでも 注目を集めている。しかし、1羽当りの価格が14〜19シンガポールドル(約980円 〜1,300円)と、通常のブロイラー(3シンガポールドル=約210円)を大幅に上回 っており、脂肪の少ないことは「チキンライス」にはむしろ不向きであるというこ ともあって、同国における「スーパーチキン」の将来性は必ずしも高くないようで ある。なお、AVAは、同庁の規定した現地立ち入り調査が行われておらず、また、 処理施設におけるHACCPなどの衛生基準を満たしていないとして、香港からの 鶏肉の輸入を認めていない。
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