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【ワシントン駐在員 樋口 英俊 4月5日発】「牛肉の軟らかさに関する全国調 査」は、肉牛生産者などから徴収されるチェックオフ資金を原資として、テキサス A&M大学、ペンシルベニア州立大学などの研究者により、ニューヨーク、シカゴ、 ロサンジェルスなど、全米主要8都市の小売店およびレストランでサンプリングさ れたステーキ用などの牛肉を対象として、98年から99年にかけて実施された。 牛肉の軟らかさを測定する方法としては、一定の厚さの牛肉を切断するために必 要な力を重量で示すWarner-Bratzler Shear Force(WBSF)法とトレーニングを 受けた検査員グループによる実際の食感に基づく方法が用いられた。 この調査の結果、90年に行った部位別調査との比較において、リブアイロールで 17%、トップサーロインで19%、チャックロールで21%、トップラウンドで31%、 それぞれ軟らかさが向上したことが明らかとなった。 こうした結果について、調査に当たった研究者は、90年代の初め以降、@食肉加 工処理業者(パッカー)が以前に比べて、より長い時間をかけて枝肉を冷却するよ うになったこと(短時間での急速な冷却は肉を硬くすると言われる)、A小売およ びレストラン向け納品においても軟らかさを増すための熟成期間がより長くなって いること、B調査の対象となった牛肉に、品質等級のチョイス以上のものがより多 く含まれていたことなどを挙げている。なお、トップサーロインについては、全米 肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)の働き掛けで、生体の当該部分への注射(inj ection)が減ったため、これによる損傷と肉質硬化の程度が緩和されたことも要因 の1つと考えられるとしている。 この調査を統括するNCBAの商品向上小委員会のニコルス議長は、今回の調査 結果について「肉牛生産者が消費者主導の業界となるべく真剣に行動していること のあかしである。軟らかさは消費者にとって、その満足度を左右する最も重要な要 素の1つであり、NCBAはこの問題の改善につき、DNAテストの実施、遺伝形 質の向上などに努めてきた」と述べている。 牛肉業界では70年代をピークに約20年間に及ぶ需要低迷を経験し、90年代の初め にようやく牛肉が直面する品質問題への取り組みを始めた。牛肉の軟らかさに関す る調査もその一環として、今後の取り組みのベースラインとなる情報提供を目的と して90年に実施されたものである。 この調査の結果、肩およびモモの部位だけではなく、トップサーロインについて、 販売上好ましくない硬さであることが判明し、改善の必要性が業界で認識された。 今回の調査は、そうした改善の試みのフォローアップとして実施されたものである。 牛肉消費については、ここ数年回復の動きが伝えられているが、経済の減速に加 えて、口蹄疫、牛海綿状脳症(BSE)など牛肉のイメージダウンにつながるニュ ースが相次いでいることもあり、その先行きを懸念する声もあるようだ。
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