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【ブラッセル駐在員 山田 理 4月12日発】EU委員会は4月9日、動物福祉 の観点から、家畜を輸送する際の輸送環境をさらに改善する提案を行った。 この提案は、現行の家畜輸送車に関する規則(理事会規則98/411/EC)を強化す るもので、牛、ヤギ、羊、豚などを連続して8時間以上輸送する場合、輸送車内の 温度および湿度を適切な換気などにより以下のように管理することを求めている。 また、湿度および温度の記録・警報装置の設置が義務付けられた。 (単位:℃)
畜種 | 区分 | 最低温度 | 最高温度 | |
(湿度) | 95%未満 | 95%以上 | ||
豚 | 10-30kg 30kg超 |
14 12 |
32 32 |
29 29 |
(湿度) | 80%未満 | 80%以上 | ||
牛 | 2週齢以下 2-26週齢 26週齢超 |
10 5 0 |
30 30 30 |
27 27 27 |
羊 | 毛刈り前 毛刈り後 |
0 10 |
28 32 |
25 29 |
ヤギ | 6 | 30 | 27 |
これらの条件は、家畜衛生および動物福祉に関する科学委員会の助言に基づいて 設定されたものである。 新たな規則設定により増加するコストは、輸送コスト全体の3〜5%になるとみ られる。ただし、換気による車内環境の改善により、輸送中に死亡する家畜の減少 などが見込まれるため、結果として、経済性の悪化にはつながらないものと期待さ れている。 この提案が農相理事会で採択された場合、新規の輸送車は来年1月1日から、既 存の輸送車は遅くとも2003年12月31日までに、新たな規則を順守することが求めら れる。 家畜も対象として含めた動物福祉の問題は、日本ではまだあまり注目されていな いが、EUでは、畜産物生産に供する家畜といえども、苦痛などを感じる生物であ るとの認識が一般に浸透している。このため、農場における家畜の飼養条件だけで なく、輸送時における環境、と畜方法に至るまで、動物福祉の観点からの見直しが 進められている。 この中でも、輸送時における動物の保護の問題は、動物福祉の中でも重要な検討 課題として位置付けられている。EU委員会は、今回の提案のほか、動物の輸送全 般に関する規則(理事会指令91/628/EEC)の改正についても、今年中に提案する予 定である。 また、家畜衛生および動物福祉に関する科学委員会は、2001年末を目途に、輸送 中の動物の保護に関する勧告の策定を進めている。勧告の策定作業の中では、輸送 車の積載密度や輸送時間に焦点が当てられており、勧告公表後には、これらの点に 関しても、さらなる見直しについて論議が進められるものとみられる。
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