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酪農協などの合併に商務委員会の承認免除(NZ)



【シドニー駐在員 幸田 太 4月12日発】ニュージーランド(NZ)政府は4
月9日、かねてから進められている2大酪農協とニュージーランド・デイリーボー
ド(NZDB)の合併による独占的巨大企業(仮称:NZデイリー・グローバル・
コーポレーション)の設立に関して、独占禁止の観点から必要とされる商務委員会
の承認を免除する方針を明らかにした。

 商務委員会は、公正取引法(Commerce and Fair Trade Act)に基づく独立法人
で、消費者と生産者双方の利益を守るため、公正な取引行為による健全な競争がな
されているかを監視する機関である。

 政府は、99年9月に国内8酪農協を可能な限り統合した上で、NZDBの販売機
能を取り込んだ巨大酪農協を2000年9月から設立する酪農産業再生法を議会で成立
させたが、同法の施行には、商務委員会の承認と75%以上の酪農家の支持が条件と
なっていた。商務委員会は合併後の巨大酪農協が国内で生産される生乳のほぼすべ
てを扱うことにより、価格を容易にコントロールできてしまうことを理由に、合併
に係る承認を保留していた。さらに、合併が計画された8酪農協のうち大手2農協
であるニュージーランド・デイリー・グループ(NZDG)、キウイの双方の資産
評価をめぐる対立等で決裂状態となり、同法で予定した2000年9月までの政府主導
の大合併構想はとん挫してしまった。その後、NZDGとキウイ両組合は自主的に
歩み寄り、昨年12月にNZデイリー・グローバル・コーポレーション設立について
基本合意を発表したがこれは、両酪農協の国際化対応など、問題意識の共有から再
出発したものであった。

 新合併案では、NZデイリー・グローバル・コーポレーションの設立1年後から
NZDBの一元輸出を撤廃して、誰でも自由に輸出可能とすること、また、生産者
が生産する生乳についてNZデイリー・グローバル・コーポレーション以外の競合
会社に販売できることなどを盛り込み、独占のイメージを払拭する内容が補強され
ている。

 サットン農相は、酪農乳業は高度に規制された構造と、流通と取引に関する取り
決めにおいて特色があるとし、商務委員会の承認を免除することは、合併の早期実
現を確実にするとともに、今回の政府決定について、酪農乳業界の合併を後押しす
る姿勢を強調した。

 今後、この決定を受け、生産者への説明会を4月下旬に各地で開催し、5月中旬
にNZDG、キウイ両組合員による投票を行い、その結果双方の75%以上の支持が
獲得できた場合、NZの搾乳シーズンが始まる6月1日に設立することが目標とさ
れている。しかし、現状では、仮に生産者の支持を得たとしても法改正等の事務的
手続きでずれ込む可能性が高い。

 NZデイリー・グローバル・コーポレーション設立にとって、商務委員会の承認
が免除されたことは、最大のハードルが取り除かれたことを意味している。現在、
NZの酪農乳業は、乳製品の国際貿易に占めるシェアの約35%を誇り、EUに次い
で2位となっており、1社でそのシェアを扱う巨大な企業が現れる日が近づいてい
る。


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