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【シンガポール駐在員 小林 誠 4月12日発】マレーシア畜産農家協会連合 (FLFAM)によると、マレーシアの鶏卵の供給は、今年3月以降、輸出需要を 勘案しても大幅な過剰となっている。政府は、生産者価格の上限を統制価格として 定めているだけで、価格低落時の支持対策は講じていない。こうしたことからFL FAMは、飼養羽数を削減するなどの自主対策を早急に講じなければ、中小規模の 家族経営が中心となっている同国の養鶏場は、深刻な経営危機に陥るおそれがある としている。 今回、FLFAMが供給過剰対策の必要性を発表した背景には、鶏卵の生産者出 荷価格が、3月以降、政府の統制価格である1個当たり0.23リンギ(約7.5円:1リ ンギ=32.5円)を大幅に下回り、中小生産者の推定生産コストである0.145〜0.155 リンギ(約4.7〜5円)をも下回って推移している状況への危機感が現れている。F LFAMによると、このような供給過剰の背景には、飼料会社を中心とした大企業 により、全自動式の大規模な閉鎖鶏舎が相次いで建設されたことがあるとしている。 今回、FLFAMの提案では、生産者自らが、成鶏を対象とした減羽を行い、初 生びなの購入を手控える以外に現状を打開する方策はないとしている。同国の初生 びなは、そのほとんどが国内に11ヵ所あるふ化場から調達されている。初生びなの 価格は、鶏卵の需給状況にも影響されるが、おおむね1羽当たり1.8〜2.2リンギ (約58.5〜71.5円)で推移している。 現在、同国には362戸の養鶏場があり、約2,100万羽の採卵鶏が飼養されており、 最大の生産地は同国の首都であるクアラルンプールと隣国シンガポールとのほぼ中 間に位置するマラッカ州となっている。2001年3月現在の鶏卵の1日当たりの生産 量は、約1,700万個に達していると推計されており、99年の生産量である約1,500万 個を10%以上上回っているものとみられている。同国の年間1人当たりの鶏卵消費 量は約360個と推計され、自給率は100%を超えており、年間生産量の約9%に相当 する5億6千万個が輸出されている。輸出鶏卵の大半は、隣国シンガポール向けで あり、ごく少量がインドネシア向けとなっている。輸入については、年間300トン 程度が冷凍液卵あるいは粉末の形でタイから輸入されているのみである。 なお、4月11日現在の鶏卵の卸売価格は0.16リンギ(約5.2円)、小売価格は 0.18リンギ(約5.9円)となっており、FLFAMの緊急提案にもかかわらず、生 産者価格は依然としてコスト割れ、あるいは、コストとほぼ同水準で推移している 可能性が高い。 減羽により需給状況が改善され、鶏卵価格が落ち着くのか、あるいは、中小養鶏 場がとう汰され、大手の寡占による生産・流通の再編が行われるのか、今後の動向 が注目される。
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