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【シンガポール駐在員 宮本 敏行 4月19日発】タイ最大の畜産総合会社であ るチャロン・ポカパン・フーズ社(CPF)はこのほど、現在推進している国内の 組織統合終了後、今年後半からベトナム、インドおよび台湾など他のアジア地域へ 業務を拡大すると発表した。同社は98年から国内グループの整理統合を進め、これ までに21の子会社を傘下に収めており、今年半ばを目途にしたCPインターフード 社、スター・マーケティング社などの経営権の完全獲得をもって国内の垂直的な統 合体制の構築を完了するとしている。 同社は、こうした体質強化を背景に経営効率を上げ、99年の売上高は97年と比較 して88%増の531億バーツ(約1,487億円:1バーツ=2.8円)に急増しており、200 0年は600億バーツ(約1,680億円)に上ると見込まれている。「世界の台所」を標 ぼうすることを目標に、飼料生産のみならず家畜飼養、食肉加工、さらには畜産物 の販売までを手掛けることで、従来の飼料会社としてのCPF(Charone Pokphand Feedmill)から、畜産総合会社としてのCPF(CP Foods)へと変ぼうを遂げてき た。現在、同社の事業割合は、食品部門55%、飼料部門40%、繁殖部門5%となっ ている。同社は毎年、収益の約2%を家畜繁殖、家畜および養殖用飼料の研究に充 てることで、世界における同社の技術水準の維持を図っているとし、タイ産食品の イメージアップへの貢献をアピールしている。 また、同社は、タイの重要な畜産物である鶏肉の大手輸出業者としての一翼も担 い続けている。2001年のタイの鶏肉輸出量は、前年比15%増の32万トンに達すると 予測されており、CPFはその37.5%に当たる12万トン(前年比33%増)の輸出を 見込んでいる。特に、近年、輸出の伸びが大きいEU市場からは、衛生面や動物福 祉の観点から、CPFはタイの輸出業者の中で最も高い評価を受けているとされ、 一層のEU向け輸出増の期待が高まっている。こうした状況を受け、同社は、輸出 用鶏肉生産地であるサラブリ県に、15億バーツ(約42億円)を投じて鶏肉加工場を 新設し、併せて、既設の鶏肉調製品工場やソーセージ製造工場、水産物加工場など へ20億バーツ(約56億円)の設備投資も行うと発表している。 一方、同社は、将来的に鶏肉と並んで有益なアイテムに成長すると考えられてい る豚肉の輸出にも力を入れ始めている。タイの今年の豚肉輸出量は前年比27.4%増 の8千トン(8億8千万バーツ=約24億6千万円)と予測されており、そのうち、 同社は20%を占めると見込まれている。現在、香港向けに毎日15トンの冷凍・冷蔵 豚肉を輸出しているが、今後はシンガポールなどにも販路を拡げていきたいとして いる。 同社は今後の戦略として、タイ国内においては、食品の輸出を中心に10%の利益 増が見込めるものの、他のアジア諸国での事業が成功すれば、さらに20%の増加が 期待できるとしてベトナム、インドおよび台湾における系列グループ会社の獲得に 乗り出している。現在のところ、CPFの資本占有率はCPベトナム・ライブスト ック社が40%、インドCP社が18〜19%にとどまっており、買収のための資産評価 を始めていると伝えられるが、経営権の獲得までにはかなりの時間を要するとの見 方が強い。しかし、その準備は着々と進められており、CPFのこれらの国々での 影響増の行方が注目される。
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