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米農務長官、食品安全性の優先事項に言及



【ワシントン駐在員 樋口 英俊 4月19日発】ベネマン農務長官は4月18日、
ワシントンで開催された食品安全性サミット会議でのスピーチにおいて、米農務省
(USDA)が取り組むべき6つの食品安全性に関する優先事項を示した。同長官
は、まず過去数十年間における食品の生産から消費をめぐる状況の基本的な変化を
十分理解することから始めなければならないとし、そのことによって個々に関連し
合う食品産業の各分野に有効に機能する政策を講じることができると述べた。

 次に同長官は、すべての食品安全性に関する政策が、科学的根拠に基づいたもの
となるよう確実に実行していくこと、3番目として、USDAが行う検査から消費
者の食品の取り扱いに至るまで、あらゆる食品安全性の局面について、一般市民に
対する教育を引き続き実施していくことを挙げた。ベネマン農務長官は、牛海綿状
脳症(BSE)と口蹄疫の混同に見られるように、消費者に正しい教育をしていく
ことは必ずしも容易ではないが、「Fight BAC!」キャンペーン(清潔、区別、加
熱調理、冷蔵の4つを食品安全性の基本ルールとして広める取り組み)の成功例も
あるように、民間の協力を得ながら取り組んでいきたいと述べた。

 4番目には、食品安全性に関する政策決定過程をこれまで同様に透明化し、一般
市民が関与する機会を与えること、5番目に官民共同による取り組みを進めること、
そして最後には、関係省庁との協力を強化していくことが挙げられた。

 同長官は、スピーチの中で食品安全検査局(FSIS)による食肉や家畜のサル
モネラ菌検査に関する最新レポートに触れ、サンプル中の同菌の検出率(Prevalen
ce Level)が減少しているとして、98年以降、約9千2百の食肉加工工場に導入さ
れた危害分析重要管理点監視方式(HACCP)が有効に機能していることを強調
した。このレポートによれば、HACCP導入後(98〜2000年)のサルモネラ菌の
検出率がHACCP導入以前の推計値に比べて、例えば、牛ひき肉で7.5%から3.7
%へ、鶏のひき肉で44.6%から14.4%へと大幅に減少している。このレポートは、
食品安全性に関するシステムが機能していることを確認するために作成されている
もので、今回初めて2000年1月からHACCPが導入された最小規模工場での結果
が盛り込まれた。

 同長官は、先ごろ提示された2002年度の農務省予算案でFSISの予算が食肉検
査員に係る費用などで、前年度より2,100万ドル(約26億円:1ドル=125円)増額
されるとして、USDAの食品安全性にかける意気込みの強さについても強調した。

 なお、USDAは4月初旬に、連邦政府の学校給食プログラムに基づく牛ひき肉
の買い入れについて、食肉業界からの反対の強いサルモネラ菌の検査を全量に義務
付けた規則を、一定の規制の下で不要とする規則案を提案したが、消費者団体や議
員の強い反発で、USDAはこれを取り下げた。同長官は、USDA内を含めて十
分な検討が行われずに提案されたとコメントした。


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