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【シンガポール駐在員 宮本 敏行 8月16日発】フィリピンのモンテメーヤー 農業長官は7月下旬、牛海綿状脳症(BSE)の侵入を阻止する目的で、全ての国 から肉骨粉の輸入を禁止する省令を公布したが、この措置は内外からの反発を招い ている。 同国は昨年11月、イギリスをはじめとするEU諸国からの生きた家畜や、食肉製 品などの輸入を禁止している。肉骨粉については今年1〜4月の間に15,490トンを輸 入しているが、それらは全て豪州、ニュージーランド、中国、米国およびインドネ シア産である。同長官によると、今回の措置は、国際獣疫事務局(OIE)や世界 保健機構(WHO)などの共同声明として出された「牛海綿状脳症(BSE)の防 疫体制が未整備の国々から、肉骨粉の輸入を控えるべき」との勧告に従ったものと しており、全国の空港や港湾における現品の差し押さえなどの厳格な措置が執られ ている。 しかし、この措置に対して、内外から不満の声が起こり始めている。米国農務省 は、米国では1989年以降、イギリスから家畜の輸入を禁止しており、国内でBSE が発生した実績もない、また、全ての国々をBSE発生の可能性について同列に扱 うことは公正ではないとして遺憾の意を表明している。 また、国内では、動物性飼料の原料輸入が禁止されることから、畜産物価格が上 昇するのではないかとの懸念が広がっている。小規模農家で構成される畜産協同組 合によると、動物性飼料の不足から魚粉や大豆かすの価格上昇が懸念されており、 年初に1kg当たり9〜11ペソ(約23〜28円:1ペソ=2.5円)であった大豆かす価格が、 現在はすでに13〜15ペソ(約33〜38円)に上昇しているという。また、全国養豚協 会は、本来、飼料価格が上昇すれば、養豚農家は利益を確保するため豚肉価格に反 映させるべきであるが、同国経済の不振が続く中で価格の引き上げは事実上不可能 であり、養豚農家の体力低下が懸念されるとしている。 こうした中、フィリピンは口蹄疫の撲滅対策を着々と進めつつあり、5月下旬に パリで開催されたOIEの総会において、南部のミンダナオ島が口蹄疫のワクチン 不接種清浄地域に認定されている。同国はこれを契機として、中部のビサヤ地方お よびパラワン島を清浄地域としてOIEの認定を受けるべく申請の準備を進めてい る。しかし、首都マニラが位置する北部地域のルソン島の清浄化は遅れており、政 府によれば1995年以降、同地域からは3千件近い口蹄疫の発生が確認されていると いう。政府は、中・南部の清浄化が進む一方で、北部では被害が拡大する可能性を 指摘しており、畜産物の輸出促進を図るためにも早急な防疫体制の整備が必要とし ている。 フィリピンは大陸やインドシナ諸国などから海峡で隔離されていることもあり、 伝染病対策に対する意識も高い。97年に東南アジアを襲った経済危機以降、同国経 済は低迷を続けているが、これらの伝染病の流行は農畜産業に大きく依存する同国 経済を一層悪化させることにつながりかねず、同国は今後も伝染病の侵入・まん延 防止に力を注ぐものとみられる。
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