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大規模畜産への環境規制案に批判的な意見が続出(米)


【ワシントン駐在員 樋口 英俊 8月16日発】米環境保護庁(EPA)は今年1月
12日の官報で、水質の保全を目的とした大規模畜産経営体(CAFO)に対する環境対
策関係規則の改正案を公示した。

 現行の規則は、点源汚染源として全国公害排出排除システム(NPDES)に基づく
許可証の取得などが義務付けられるCAFOに該当する家畜飼養頭数の基準は1,000家
畜単位(55ポンド以上の豚2,500頭、肥育牛1,000頭、乳用成牛700頭、採卵鶏及び
ブロイラー10万羽(施設等により異なる場合あり)などに相当)と規定されている。
一方、飼養規模にかかわらず、25年に一度の発生頻度で、24時間続く暴風雨に見舞
われた時以外にふん尿等の廃棄物を排出しない場合、NPDESの許可証取得が免除さ
れるとの例外が認められている。

 今回の規則改正案は、CAFOの基準として、現行より頭数要件が厳しい。@500家畜
単位以上のものとする案とA1,000家畜単位以上のものおよび300家畜単位以上1,000
家畜単位未満のもので、一定のリスク要因を満たすものという2つの案が提案され、
さらに現行の「25年、24時間暴風雨」例外規定の廃止も提案されている。

 このほか同改正案では、CAFOに対して、それらの家畜飼養現場およびふん尿施設
下の地下水と地表水との関連についての調査(水文学的(hydrologic)調査)、CA
FOによるたい肥の土壌散布に当たって、土壌栄養分の検査やリン酸を基準に計算さ
れた許容量を超える散布の停止なども義務付けられている。

 この規則改正案に関するパブリックコメント受付期間は、当初5月中旬までとされ
ていたが、さらに時間をかけて検討したいとの関係者からの要望により、7月30日ま
で延長されたものである。

 全米最大の生産者団体であるファームビューローは声明の中で、同提案について、
州レベルの取り組みが存在するのに、連邦政府がさらに規制を重ねることは不必要
であり、生産者に不公平な負担を強いるものと批判するとともに、土壌栄養管理や
非点源汚染源により汚染された地表流水の問題については、「誘引」に基づく政策
を実施するようEPAに要請した。

 垂直的調整で大規模化の進む養豚業界からは、全国豚肉生産者協議会(NPPC)が
食料・農業政策研究所(FAPRI)による経済的な影響分析を含む詳細なコメントを
提出した。同分析によれば、不浸透性のラグーンを設けるコスト増などにより、中
西部や東海岸中部のかなり多くの養豚経営体が廃業に追い込まれる可能性が高くな
るとしている。NPPCは、規則改正案の目的は支持するが、その方法は経済的にも合
理的で実施可能なものとしなければならないとしている。

 全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)も、同改正案を実際的でなく、複雑で混乱を
与えるものとする声明を発表した。NCBAは、目的を達成するための計画を州が策定
することを認めることや、たい肥に関する管理方法は、州による環境の違いを考慮す
るようEPAに提言している。

 同改正案は、これらを含む多数のコメントを検討した後、来年12月に最終規則と
して決定され、翌年1月に公布される予定となっている。 


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