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南欧を中心に高齢化が進むEU農業


【ブラッセル駐在員 山田 理 8月23日発】EU統計局(EUROSTAT)は先般、E
Uにおける農業労働人口(フルタイム労働に換算)の変化に関するショートレポー
トを公表した。

 これによると、EU9ヵ国*の農業労働人口は、75年と97年との比較で、43%減
と大幅に落ち込んでいる。同期間において、このような低下傾向はほぼ一貫して見
られる(年2.5%減)が、@低所得層の農家の離農が多く見られた75〜80年(年3.0
%減)および、A耕種作物で介入価格の引き下げや生産調整が行われた結果、小規
模層の農家の離農が進んだ87〜90年(年5.1%減)にかけて、農業労働人口の減少
率が特に高くなっている。

 しかし近年では、減少率の縮小傾向が見られる。耕種作物について見ると、85〜
97年に記録された農業労働人口減少の大半(81%)が87〜90年の期間に集中し、そ
の後は安定的に推移している。また、酪農では、84年に生乳生産枠(クオータ)制
度が導入された後、段階的な減少に変化し、95年以降は減少幅も縮小した。

 一方、減少の続く農業労働人口であるが、その生産性(純付加価値額/農業労働
人口)は、75年と97年との比較では、2.5倍に増加している。この要因としては、
生産技術の向上と生産規模の拡大による集約化が挙げられる。

 EU15ヵ国の農業労働人口(97年)の種類別では、家族労働人口が主体で79%を
占めている。家族労働人口の割合は、加盟国間で大きく異なる。フィンランド、ア
イルランドおよびオーストリアで90%を越える一方、経営規模の大きいデンマーク
やイギリスで約60%となっている。過去からの動きをEU9ヵ国について見ると、
75年に84%を占めた家族労働人口は、97年には81%と減少したが、その減少幅はわ
ずかなものとなっている。

 最後に、EU15ヵ国の農業労働人口(95年)を年齢構成別に見ると、55歳以上の
割合は35歳未満を上回り、全体の38%に上る。過去からの動きをEU9ヵ国につい
て見ると、79/80年で32%であった55歳以上の割合は95年には38%に上昇した。特
に65歳以上の層の増加が顕著に見られるなど、農業労働人口の高齢化が徐々に進ん
でいることをうかがわせる。

 国別では、ギリシャ、スペイン、イタリアおよびポルトガルの南欧の4ヵ国がEU
平均を上回っている。高齢化の要因について、レポートでは、これらの国では晩年
まで農業に従事し続ける傾向があることを指摘しているが、残念ながら、年々高齢
化が進行している要因には言及していない。
 

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