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豪州・NZ政府が家畜伝染病緊急対応計画に合意


【シドニー駐在員 野村 俊夫 8月23日発】豪州連邦・各州およびニュージーラ
ンド(NZ)政府の関係閣僚からなる豪州NZ農業資源管理評議会(ARMCAN
Z)は8月17日、定期会合を開催し、懸案の家畜伝染病緊急対応(EADP)計
画に合意した。これは口蹄疫などの家畜伝染病の発生を想定して対応策や関連コス
トの官民負担割合などを定めたもので、この合意により総合的な家畜伝染病対策が
開始される見通しとなった。

 豪州・NZでは、口蹄疫や牛海綿状脳症(BSE)の発生はみられていないが、
ヨーロッパを中心にこれら疾病が発生している中で、ひとたび侵入を許せば国内の
畜産業が甚大な損害を受けることは間違いなく、その対策が最重要の課題となって
いる。

 EADP計画は、家畜伝染病の監視体制の整備から発見時の対応に係るトレーニ
ングまでを含む総合的な家畜伝染病対策であり、関連コストを官民で分担して負担
することが特徴となっている。

 具体的には、63種類の家畜伝染病を人体・環境と畜産業に対する影響の度合に
応じて4つのカテゴリーに分類し、カテゴリーごとに官民のコスト負担割合を定め
る。政府がコストを全額負担する第1カテゴリーにはニパウィルス、日本脳炎など
4種類、第2カテゴリー(同80%負担)には口蹄疫、BSEなど12種類、第3
カテゴリー(同50%負担)にはニューカッスル病、豚コレラなど16種類、第4
カテゴリー(同20%負担)には鶏伝染性気管支炎、豚インフルエンザなどが分類
される。

 今回のARMCANZによるEADPの合意を受け、各政府は関係法規の整備、
各業界団体は内部の最終調整を行うこととなるが、肉牛・食肉団体が合意を歓迎し
ている一方、羊毛団体はコスト負担への不満を強めており、調整が難航する可能性
もある。

 一方、ARMCANZは今回、EADP計画と併せて、全国家畜個体識別制度
(NLIS)の推進、反すう家畜に動物性飼料を与えない措置の強化(BSE対策)
にも合意した。

 NLISは、家畜伝染病が発生した場合にその感染経路を迅速に特定して拡大を
防ぐ有効な手段とされており、義務化を求める意見も強いが、連邦政府が財政支援
に難色を示している。こうした中、ビクトリア州政府は先月、州単独でも支援措置
を講じると発表して注目された。羊を対象にするかなど未解決の問題も多いが、N
LIS自体の重要性については多くの者が認識している。

 一方、BSE対策は、EUが来年早々、豪州のBSE清浄国(レベル1)ステー
タスについて再審査する予定であるため、ARMCANZの緊急課題として挙げら
れた。反すう家畜への動物性飼料の給与はすでに禁止されているが、これを確実に
保証する措置が実際に取られているか否かが再審査のポイントになると見られてい
る。

 豪州・NZの畜産業は国家経済を支えるほどの重要産業であるため、家畜伝染病
対策は、極めて重要な政策課題となっている。


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