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【シンガポール駐在員 小林 誠 8月23日発】インドネシア政府は、今年1月に 新たに付加価値税を導入した。2月になって政府は、畜産物を含む食料品への課税 に対して、国民生活への影響が大きすぎるとする農業省をはじめとした農畜産業関 係者からの強い要請を受け入れ、食料品とその原材料となる農畜産物を条件付きで 課税対象外とした。これにより畜産物の生産の原材料となる飼料についても課税対 象から除外されることになっている。しかし、この除外規定が適用されるのは、農 家など個人が生産・加工を行う場合だけで、協同組合を含む企業体が生産・加工を 行う場合には課税されることになっている。 こうした中、企業が組織するインドネシア飼料協会やインドネシア養鶏企業協会 は、付加価値税は品目を基準として運用されるべきであり、経営規模や法人格の有 無によって課税するのは不公平であるとしている。また、両協会は、生産者の生産 効率や競争力を課税基準とすることは価格政策の本旨から外れたものであるとして、 政府に強く再考を求めている。 このように課税対象を品目別にして公平な運用を行うべきとの声がある一方で、 インドネシア牛肉加工業協会は、税が二重、三重に支払われているとして制度自体 の改正を求めている。同協会は、フィードロットでの肥育素牛の例を挙げ、肉牛は 肥育の仕上がり・販売時に付加価値税が課せられ、加工品についても付加価値税が 課せられ、いたずらに販売価格を引き上げることになっていると不満を表明してい る。 インドネシアは、今年7月末に政権が交代したが、98年5月のスハルト政権崩壊 時のような混乱がなかったことから、メガワティ新政権に対する経済回復への期待 が高く、前政権末期に一時1米ドル=11,000ルピア程度まで下落していた同国の通 貨ルピアが9,000ルピア程度まで回復している。これにより、飼料や肥育素牛など を輸入に依存している同国の畜産業はこれら輸入価格の低下に伴う生産コストの低 下から回復の兆しをみせている。このため、畜産物の付加価値税に対する畜産企業 サイドからの不満にもかかわらず、最近の畜産物の価格は横ばいないしは下落傾向 で推移している。首都ジャカルタの市場では、ブロイラーが200ルピア値下がりし て1s当たり6,300ルピア(約88円:100ルピア=1.4円)、鶏卵が80ルピア値下が りして1個当たり350ルピア(約5円)、牛乳が2,000ルピア値下がりして385ml当 たり14,000ルピア(約196円)となっている。 こうしたことから、付加価値税の運用に対する大手生産者・加工業者の不満は再 三噴出しているものの、新税の導入によって畜産物の市場価格が上昇の一途をたど っているという状況ともいえず、一般農家や消費者の反応は導入当初に比べ、冷静 なものとなっている。
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