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2001年の10大ニュース


【ブエノスアイレス駐在員事務所】浅木 仁志、玉井 明雄

1.アルゼンチン、パンパで口蹄疫発生
 2001年3月16日、アルゼンチン農畜産品衛生事業団(セナサ)は、国際獣疫事務
局(OIE)に対し、同国の農牧畜生産の中心地であるパンパで口蹄疫が発生した
ことを通知した。この通知に先立ち、同国は、米国、カナダ、チリなど主な輸出先
の食肉輸出許可書の発行を停止、牛肉輸出量の約8割を占める北米自由貿易協定
(NAFTA)、EUおよびメルコスルの3大市場を失った。発生したウイルスは
血清型Aで、家畜の殺処分は行わず、国内の全牛群を対象としたワクチン接種の防
疫措置を講じた。

2.ウルグアイ、ブラジル南部でも発生、メルコスルを巻き込む口蹄疫
 アルゼンチンで2001年3月に発生した口蹄疫は、近隣のメルコスル諸国にも波及
した。ウルグアイでは、4月25日に血清型Aの口蹄疫の発生が確認されて以来、病
気は国内全土に爆発的に広がり、OIEに認定された口蹄疫ワクチン不接種清浄国
の衛生ステータス(96年認定)を失った。5月8日には、ウルグアイとの国境に近
いブラジル南部リオグランデドスル州においても血清型Aの口蹄疫が確認された。

3.南米の口蹄疫にかかる衛生ステータスに大きな変更
 今年5月下旬から6月にかけてOIE本部で第69回年次総会が開催され、口蹄疫
に関する南米諸国の家畜衛生ステータスが変更になった。口蹄疫の発生でウルグア
イとアルゼンチンはワクチン不接種清浄国の認定が留保された(その後清浄国リス
トから削除される)。一方ブラジルは、98年以降ワクチン接種清浄地域であった南
部畜産圏を構成する2州が今年5月の口蹄疫発生で地域認定を留保された。しかし、
昨年認定された1連邦地域と南・中西部5州に続き、今回新たに東部畜産圏を形成
する6州がワクチン接種清浄地域に認定されたことからブラジルはワクチン接種清
浄地域を大きく広げた。

4.ブラジルの農産物輸出は大幅な増加傾向
 開発商工省貿易局によると、2001年1〜10月におけるブラジルの主要農産物輸出
量は、前年同期に比べ、大豆が37.8%増の1,526万トン、大豆かすが19.8%増の953
万トン、トウモロコシが745倍の432万トン、鶏肉が35.8%増の103万トン、牛肉が8
7.2%増の29万5千トン、豚肉が2.2倍の20万4千トンとそれぞれ大幅に増加した。
増加要因として、@今年の穀物および油糧種子の記録的な増産、A自国通貨レアル
が安値で推移する為替動向、BEUにおける牛海綿状脳症(BSE)および口蹄疫
問題などが挙げられる。農産物輸出の大幅増加などにより、2001年の貿易収支は、
94年以来7年ぶりの貿易黒字となることが見込まれている。

5.カナダ、ブラジル産牛肉を一時的に禁輸
 カナダは2001年2月2日、ブラジルの牛海綿状脳症(BSE)に対する家畜衛生
措置が不充分だとして、ブラジル産の生鮮・加工牛肉の輸入を一時的にストップす
ると発表した。カナダの禁輸措置により、米国とメキシコも北米自由貿易協定(N
AFTA)に基づいてカナダと同様の措置を取ることとなった。ブラジルはカナダ
産の輸入製品に制裁を加えるとして、一時は南北アメリカ大陸をまたがる貿易戦争
に発展しそうな様相を呈した。その後NAFTAの合同衛生調査団の調査結果によ
りブラジルのBSEフリーが再認識される結果に落ち着いた。

6.92年以降の最安値を記録したアルゼンチンの去勢牛価格
 アルゼンチンでは、2001年3月の口蹄疫発生による主要な輸出市場の閉鎖により、
国内における肉牛供給が過剰となったことなどから、生体牛価格が大幅に下落した。
アルゼンチン農牧水産食糧庁によると、リニエルス家畜市場における10月の生体1
kg当たりの去勢牛平均取引価格は前年同期比25.8%安の0.669ペソ(約84円:1ペ
ソ=125円)となり、兌換(だかん)法導入の翌年に当たる92年以降の最安値を記
録した。同市場における取引頭数の増加要因としては、@主要な輸出市場の閉鎖に
より、輸出向けの肉牛の直接取引が減少し家畜市場に出荷されたこと、A経営収支
の悪化により資金調達を急ぐ生産者が、直接取引に比べ代金決済の早い家畜市場へ
の出荷を選択したことなどが挙げられる。

7.ウルグアイ、ブラジルのリオグランデドスル州、EUへの牛肉輸出再開
 ウルグアイ農牧水産省は、11月1日以降にと畜処理されたウルグアイ産の牛肉と
羊肉(骨抜き熟成肉)の輸入をEUが解禁する旨を発表した。今年4月下旬にウル
グアイで口蹄疫が発生し、EUは同国からの生鮮肉の輸入を中止していた。ほぼ半
年ぶりの生鮮肉輸出の再開だが、同国では2003年までワクチン接種を継続する計画
である。さらにEUは、ブラジル南部のリオグランデドスル州での口蹄疫の発生で
2001年5月から同州産の生鮮牛肉の輸入を中止していたが、12月1日より同州産の
生鮮牛肉(骨抜き熟成肉)の輸入を解禁することを決定した。また、同州産の偶蹄
類家畜とその食肉製品をブラジル国内の口蹄疫清浄地域へ搬出することも可能とな
った。

8.過去最高を更新したアルゼンチンの家きん肉生産
 アルゼンチン農牧水産食糧庁によると、2000年の家きん肉生産量(可食処理ベー
ス(骨付き):推定値)は、と鳥羽数が3億4,800万羽と前年を1.4%上回ったこと
から、過去最高を記録した前年を1.8%上回る92万1千トンとなった(家きん肉生
産のうち約99%が鶏肉と推定されている。)。これは、5年前の96年と比べて28%
の増加であり、その要因として、飼養技術の向上により、1羽当たりの歩留まり率
が増加したことなどが挙げられる。

9.01/02年度の作付面積は、トウモロコシ減、大豆増の見込み(伯、亜)
 ブラジル、アルゼンチンにおける01/02年度の作付面積は、トウモロコシの減少
が見込まれる一方、作付けに当たってトウモロコシと競合関係にあり、価格が優位
である大豆の増加が見込まれる。ブラジル農務省によると、同国のトウモロコシの
作付面積は、3.7%減の1,250万ヘクタール、大豆は11.6%増の1,528万ヘクタール
と見込まれている(10月23日時点)。一方、アルゼンチン農牧水産食糧庁によると、
同国のトウモロコシの作付面積は、トウモロコシ作付期の降雨過多による影響も大
きかったことから18.0%減の274万ヘクタール、大豆は7.2%増の1,130万ヘクター
ルと見込まれている(11月30日時点)。

10.アルゼンチンの有機食品、近年生産を増加
 日本では改正JAS法に基づく変更で、この4月から有機食品を含む食品表示が
新しくなったが、アルゼンチンにおいても近年関連の法律を制定し、有機食品生産
の取り組みに力を入れている。有機食品のうち有機畜産物の生産量比率は、99年は
約6%であったが、2000年は約13%と倍以上に増加しているところである。また、
最近セナサと有機認証機関との間で、パタゴニア地域振興などの目的で有機羊肉生
産プロジェクトが動き出しており、有機羊肉が国内市場に出まわるのも遠くないよ
うだ。


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